「SOAやEAIでなくエンタープライズ2.0」――企業のあるべき姿とは
エンタープライズ2.0の目指すものは何なのか。リアルコムの吉田健一取締役CMOが語るその本質とあるべき姿とは……。
リアルコム主催のイベント「REALCOMエンタープライズ2.0DAY」が9月26日、都内で開催された。キーノートスピーチを担当した同社の吉田健一取締役CMOは、イベントのテーマであるエンタープライズ2.0のあるべき姿を語った。
エンタープライズ2.0の本質とは
「会社はなんて仕事がしにくい場所なのか」――そういう声がさまざまな企業から出ている。声の主はデジタルネイティブ。子供のころからインタラクティブなインターネットツールを使ってきた世代のことだ(関連記事参照)。彼らの出現とともに、企業が抱えるITシステムのレガシー化が同時進行しているのが、企業におけるITシステム部門を取り巻く現状だ。
吉田氏は、エンタープライズ2.0は、「Web2.0の技術やコンセプトに影響を受け進化する次世代企業情報システム」と定義付けた上で、エンタープライズ2.0の本質について言及した。
エンタープライズ2.0の本質は、ITが「作る」から「使う」ものにシフトする「ITコンシューマライゼーション(Consumerization)」が起こっていること、ITベンダーからエンドユーザーへパワーシフトが起きたこと、そしてWeb2.0による「人中心」の考え方が台頭することの3点に集約されるという。これらから、企業は情報マネジメントやワークスタイルの課題を考える必要があると吉田氏は指摘する。
上記の本質や、「エンドユーザーのパワーがいろんなものを動かす」(同氏)という点をかんがみると、エンタープライズ2.0という言葉には、発展したWebサービスや技術を経験し、ユーザーとして目の肥えた「個人」が、企業のITシステムを動かすという流れを含んでいるといえる。
SOA、EAI、EDIとエンタープライズ2.0の違いとは
SNSやWikiなどのツールを企業内に取り入れるだけでは、情報システムにおける問題は解決しない。ばらばらなシステムを統合するためにスイートを導入するのが一般的な解決策だが、「一部の企業にのみ有効な手段」(同氏)にすぎない。つまり、多くの企業にとって、必ずしもスイートがシステムの連携における問題解決をもたらすとはいえないのだ。
これまでベンダーが提供してきたソリューションは、単一プラットフォームのスイートへの移行のみにとどまっていた。業務システム連携やコストに関して、ユーザーや企業のニーズを満たし切れていない状況だ。
ではニーズを満たすにはどうすればいいか。その方法として「マッシュアップ」が挙げられた。ここでのマッシュアップとは、情報系における社内外のシステム連携を指す。
これまで、SOA(サービス指向アーキテクチャ)やEAI(Enterprise Application Integration)、EDI(Electronic Data Interchange)などの概念が市場をにぎわした。これらは主に業務系システムの連携を指し、連携対象は社内もしくは社外のいずれかに限定されたものだ。エンタープライズ2.0とSOAなどの概念の間には、明確な線引きがなされている。
エンタープライズ2.0が目指す姿
エンタープライズ2.0が目指す姿、それは「人と人とが組織の壁を越えて有機的につながった、21世紀のワークスタイルやライフスタイルを実現するもの」(同氏)という。それは、固定された階層型組織ではなく、現場レベルで自律的な問題解決を行う自己変革型組織へと企業が変化することともいえる。
「上司に言われたことをやるのでなく、現場の1人1人が情報の総司令部として、スピーディーに問題を解決する」(同氏)といったように、企業内の「個人」が主役となって組織を改善することこそ、エンタープライズ2.0の時代における企業のあるべき姿といえるのではないか。
関連記事
- 「デジタルネイティブ」が導くエンタープライズ2.0
子供のころから双方向的なネットツールを使ってきた「デジタルネイティブ」世代が、企業にWeb2.0ツールをもたらし「エンタープライズ2.0」の先導役になるとGartnerは語る。 - 好むと好まざるとにかかわらず職場環境をWeb2.0化すべき時代
Enterprise 2.0 Conferenceの基調講演では、WikiやマッシュアップなどのWebベーステクノロジーを業務環境に持ち込まざるを得ない時代がやがて到来するはずであり、ITマネジャーは今から準備をしておく必要があるということであった。 - 「敷居の低さ」が企業の知を「カイゼン」する
せっかく導入した情報共有ツールだが、なかなか使われないのが実情。システム導入の担当者は頭を柔らかくしてみよう。「こんな適当で大丈夫なのか」というくらいのガバナンスの方が、社内の情報共有はうまくいくのかもしれない。 - 社員を救う“2.0”は本命なのか?
エンタープライズ2.0の本質は、イントラネットの変革だ。日ごろ業務の効率化を考えていても、最近ではインターネットの情報が社内情報と相まってしまい、収集がつかなくなっている人が多いのではないだろうか。 - 企業のIT革命をリードする「デジタルネイティブ」世代
ポッドキャスティングやブログ、VoIP(Voice over IP)、ビデオ・オン・デマンドといったコンシューマー技術が2012年までに職場に進出する見込みだ。この進撃を率いるのは、これらの技術に囲まれて育った20代の若者たちで、Gartnerのアナリストたちには「デジタルネイティブ」と呼ばれている。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.