認められたい、という欲求は働く人の「野性」である:人心掌握の鉄則(2/2 ページ)
われわれは何か問題が起こってから、人の持っている欲求について考え、分析などを試し対処法を見出そうとする。しかし本当は問題が起こる前からこれらの欲求について意識すべきなのだ。
平穏な状態にこそ目配りを
例えば、40代以上のマネジャー層からすると、20代、30代は働き手として大いに期待する存在だ。だからこそ、彼らのモチベーションをどう上げていくかというテーマが浮かび上がってくる。
齋藤氏は40代以上のマネジャーの若手社員に対する認識を再考するのも大切だと説く。
「大体、若者に対して40代以上の人は『何がやりたいのかわからない』『忍耐力がない』『協調性がない』といったイメージを持つことが多いかもしれない。しかし、前に挙げた5つの欲求の中で満たされないものがあるという見方でもう一度部下の態度、言動を見直してみてほしいですね」
さまざまな言動は、個人の性格、気質も影響していることはあるだろうが、それ以外にもともと持っている野性が満たされていない、歪められているという発想でもう一度考えてみるということだろう。
5つの欲求は人の心の中に分かりやすい形で存在しているものではない。奥底に隠されているものだということだろうか。
「ちょっと問題児的な言動を繰り返す人、自己主張の激しい人だけでなく、普段は非常に真面目な人物、どちらかと言えば温厚でおとなしいタイプの若者にも当然5つの欲求を心の奥底に持っているわけですね。承認されたい、働く意味を知りたい、もっと創造性を発揮したい、といった欲求があるわけで、そこを見誤るとフォローするタイミングをなくしてしまう」(齋藤氏)
モチベーションが明らかに下がってる人をあわててフォローしようとするのは、完全にタイミングを逸していると言わざるを得ない。表面化する前から、何らかのアクションが必要、ということだろう。その尺度となるのが5つの欲求 ということになる。
齋藤氏は会社帰りに食事をしたり、酒を飲むことも大切だと話す。しかし最近の若者はそういう付き合いは苦手なのでは? と話を向けると次のように話してくれた。
「それもある種の偏見ではないでしょうか。職場を離れてたまには上司といろいろと話がしたいという若手は多いと思いますよ。誘っても気のない態度をすることもあるかもしれませんが、それほど気にする必要はない。ただし、部下と話しているときに自分の経験談や、お説教に終始しないことです。相手の話をじっくり聞く態度が大切です」
「月刊アイティセレクト」2007年11月号 特集「モチベーションコントロールに役立つ 人心掌握術の鉄則」より)
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