ベンダー任せの仮想化採用に潜むわな:仮想化の達人
あなたの企業では仮想化技術の導入をベンダーに託すことになるかもしれない。しかし、ちょっとしたボタンの掛け違いでトラブルが発生することもある。「仮想化技術には多くの不確定要素がある」ことはゆめゆめ忘れてはならない。
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仮想化技術を用いて古いシステムの延命を図ろうと考えています。これまでに付き合いのあるシステムインテグレーターでも仮想化ソリューションを提供しているようですので、そこに発注するつもりでいます。特に問題はないと考えていますが、考えられるリスクとしてはどのようなものがありますか?
ご質問からは、仮想化技術の導入をベンダーに託すかのような印象を受けますが、いずれにせよ、既存のシステムを仮想化環境に移行しようとお考えなのであれば、「仮想化技術には多くの不確定要素がある」という前提で望まれることをお勧めします。
既存システムから仮想化環境への移行を検討する際の重要なポイントとして、「本当にそのシステムを仮想化して延命する必要があるか」ということが挙げられます。 仮想化の事例では、古いNotesやWindows NTを「延命」させたいという理由で仮想化を用いたケースが紹介されることが多々あります。もちろん、そこにはやむを得ない事情があるかと思いますので、それは置いておくとしても、実際にはかなりの工数を掛けてテストを行っているという事実を忘れてはいけません。
特に、仮想化環境に移行したそれらのシステムのテストを誰が受け持つのかなど、計画段階でしっかりと検討しておく必要があります。ユーザー企業としては、「新しい環境に移行するだけで、業務アプリケーションには手を加えないのであれば、そのテストもシステムインテグレーターが行うはずである」と考えがちで、一方のシステムインテグレーターも、「(ユーザー企業の)業務システムについては把握していないので、動作確認を含めたテストはユーザー企業自身が行うべきである」と考えるのが普通です。このズレはトラブルの基です。
もう1つ、古いシステムを移行する際には、そのシステムがブラックボックス化しているリスクが存在します。Notes R4.6の延命の是非についての記事でも触れましたが、移行自体は可能であっても、満足できるテストを誰も行えないとなると、長期的にはさらなるコスト負担が必要となる可能性を内包することになることを忘れないでください。TCOは短期で考えるものではありません。
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