「私を奮い立たせる言葉」を考えてみよう:人心掌握の鉄則(2/2 ページ)
部下のモチベーションを完全にコントロールすることは不可能である。しかしできるだけ健全な状態に保つ努力は怠ることはできない。まずは「君の考えていることなんかすべてお見通しだ」という態度から変え、自分が大切にしている言葉を見直してみよう。
マジック・ジョンソン「俺はチアリーダーだってやる」
野性を枯らさないためには、マネジャーだけが奮闘するだけではいけない。部門、部署内でスタッフ同士が互いを認め合い、相手のモチベーションを上げる、維持する努力が必要だ。
これには、小さなことでも感謝の意を表すことが最も手っ取り早い。個人的な関係の中で行うだけでなく、会社が仕組みとして「感謝しあう、ほめ合う」行為を奨励していく方法もある。会社が定型のカードを作成して、感謝のメッセージを公式に渡し合い、互いの気持ちを確認する仕組みを取り入れているケースもある。また会議などで他のスタッフの前で、具体的に感謝したいことを定期的に述べ合うなどの方法もある。こうした試みは最初はとっつきにくいかもしれないが、仕組みとして取り入れて継続していくと思わぬ効果で出ることがある。
いずれにせよ、野性を枯らさない一番の養分は言葉である。
もちろん「やる気をだせ」「頑張れ」「君ならできる」といった直接的なものだけでいいはずがない。そこには言葉をかけられた人間がただうれしいと感じるのに止まらない「含蓄」が要求される。「含蓄」などと書くと、故事などを勉強しなくてはいけないのかと思いがちだが、そうではない。
「プレイしているときは、勝つためにプレイしている。それだけだ。得点を入れるためでも、リバウンドを取るためでも、ゲームで目立つためでもない。勝つためだ。そのためのオレはリバウンドも取るし、得点もするし、パスもするし、チアリーダーだってやる!つまりオレは、自分の栄光ではなく、自分を捨ててチームの優勝を熱望する姿勢を示したいんだ」
このセリフは米国プロバスケットボールリーグNBAで活躍し、2002年に殿堂入りを果たしたマジック・ジョンソンの言葉だ。彼は91年HIV感染を公表して引退した後も、92年バルセロナオリンピックで代表として参加し、その後もビジネス界に進出し成果をあげている。
もちろん、「プレイ」を「仕事」、「得点」を「売上、利益」、「チーム」を「会社」に変えて部下に話せば、感動してもらえるというのではない。
このセリフの中に、5つの『自己承認』『自己成長』『意味欲求』『創造性発揮』『自己実現』という欲求のすべてが込められているといっていいだろう。しかも内容は自己犠牲について表されたものである。こうしたストレートな言葉にも、誰もが持っている欲求について語る何かが秘められている。
自らを犠牲にし、チームに貢献することが、ひいては隠された野性を大いに満たすことにつながるということは、モチベーションが低下した人に対しては大きな発想の転換につながる。安易に利用すると信頼を失いかねないが、ここぞと言うとき、よく考えて使えば「目から鱗」のメッセージになるだろう。まずは、マネジャー氏自身が、自分がどんな言葉で元気になるのか、その言葉は5つの欲求の何を刺激するのかということを考えてみるのがよいだろう。
「月刊アイティセレクト」2007年11月号 特集「モチベーションコントロールに役立つ 人心掌握術の鉄則」より)
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