日本と検索が蜜月関係を築くために必要なこと:次世代検索の行き先(2/2 ページ)
指数関数的に情報量が増える中、日本でも検索市場は盛り上がりを見せる。だが欧米諸国のまねをしていても検索をビジネスに生かすことはできない。日本企業は検索結果への責任と、技術力への信頼を持って検索と向き合う必要がある。
世界との差は“日本人気質”にあり?
なぜ今、日本の検索は世界と水をあけられているのか。例えばデータベース内検索といった検索技術は、90年代だけみれば日本の技術は世界と比べてそれほど遜色がなかったという。だが、その後日本では検索の技術を組織や企業内での利用にとどめたのに対し、世界は検索技術を企業外に広げ、新たなサービスに展開していった。
「たこつぼ的、すなわち技術の研究は懸命に取り組むものの、それをサービスとして経営やマーケティングに取り入れようとする考えは日本企業にはなかった」。日本には技術を深めようとする素養はあれど、それを人と分かち合う視点が抜け落ちていたと、経済産業省商務情報政策局の八尋俊英情報処理振興課長は振り返る。
世界トップレベルのIT技術を持つ日本が新しい技術を生み出していない――八尋氏は、日本が抱える“IT技術の行き詰まり”に言及した。その原因は「技術とサービスの同期がとれていない」ことにあり、それが日本におけるここ10年の動きだと指摘する。
これらを打破するために必要なこととして同氏は、「日本が得意とする情報家電や自動車などの得意分野と検索をつなげていくのがいいのではないか」と提言した。
お家芸と検索の橋を架ける国家プロジェクト
「情報大航海時代の主旨が1年前に比べてようやく伝わってきた」――次世代検索技術の研究や開発という名目で紹介され、GoogleやYahoo!に代表されるキーワード検索を扱うものとして理解されることも多い「情報大航海プロジェクト」についても、同氏はコメントした。
世界の検索がWeb情報を世界中からクロールしてランキングすることに帰結しているのに対し、日本では家電製品やカーナビなど至るところに個人情報が存在する。情報大航海プロジェクトは、これらを扱う製造業やサービスと個人の行動履歴をひも付けることで、イノベーションを生み出せるのではないかという仮説から始まったという。
同プロジェクトの骨子は、ITコミュニケーションが、テキスト情報だけでなく映像や製品情報、交通履歴、地理情報などに広がったことを受け、ICカードや次世代カーナビ、携帯電話、公共交通機関など、ユーザーの行動履歴が蓄積されたもので利用されるという考えの下、生活やビジネスなどのあらゆる場で活用できる検索の情報基盤を構築することにある。
しかし個人の行動履歴はプライバシーに加え、著作権をはじめとする制度面において問題がからむ。同氏は「世の中に合わせて制度を変えていくことも必要」になるとし、この動きを推進することが人々の生活を変えていくと説明した。
これまでの国家プロジェクトではITベンダーの開発技術に焦点が当てられることが多かったが、「これからは技術を広める“サービス開発”が中心となるようなプロジェクトが必要」(同氏)という。サービスに主眼を置いて、生活への技術転用を目指し、専門家だけの閉鎖されたプロジェクトの陥らないようにする。今までの日本“らしからぬ”取り組みを進めることで、次世代検索の新たな方向性が生み出されるのではないか。
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