企業運用から見る検索の今後:次世代検索の行き先(2/2 ページ)
今後どのような検索ツールがユーザーに支持されるのか。企業内検索には、今後ユーザーの検索をより簡単にするヒントがちりばめられている。
マネジメントサイクルに従った管理
これまでの検索は、導入後にサーバのメンテナンスなどを考えればいいという仕組みだった。だが、エンタープライズサーチでは、ユーザーの利用状況などを反映し、常に使いやすい仕組みを提供しなければならない。
企業の計画、実行、評価、改善のプロセスを実施するPDCAサイクルに沿って、Web上の管理画面やコマンドラインツール、管理用API、SNMPによる監視などの管理機能を取り入れる必要がある。
エンタープライズサーチでは、以下のような機能がPDCAサイクルに合致する。
- 計画(PLAN): 検証環境などでチューニング結果の確認
- 実行(DO): 本番環境へチューニング結果のデプロイ
- 評価(CHECK):ユーザーの検索状況(1件もヒットしなかったキーワードを見る、など)のリポートを参照
- 改善(ACT): 同義語の登録やナビゲーションの表示順などチューニングの実施
カスタマイズ機能による非テキスト検索
イメージやビデオといったマルチメディアコンテンツの検索も重要となる。企業内にはこのようなコンテンツや、独自形式のCADコンテンツなど、エンタープライズサーチ製品が対応していないファイルフォーマットを検索するケースが必ずあり、これらに対応しなければならない。
対象となるコンテンツからどのようにメタデータを抽出しインデックスに格納するか、検索時にキーワード(文字列または比較対象のコンテンツ)からインデックス作成時と同様にメタデータを抽出するかについての仕組みが必要だ。
イメージコンテンツの場合、画像のスケールやアスペクト比率、形状や色彩などをメタデータとして抽出しインデックスに格納し、ビデオコンテンツの場合は、音声のテキスト化によりメタデータを抽出することなどが考えられる。
キーワードを入力させない検索とパフォーマンス
前述のナビゲーション機能でも触れたが、次世代検索では検索エンジンでありながらキーワードをできる限り入力させないものが注目されている。例えば、参照したコンテンツや検索キーワードに応じてユーザーにお勧めのコンテンツを提示するリコメンデーション機能や、事前に検索キーワードを登録しておくことで、そのキーワードに基づいた新規コンテンツを表示したりメールで知らせるサーチレット機能などが該当する。
暗黙知に絡めた「暗黙検索」ともいえるこの考え方の実現には、システムの陰で実行される検索が増えることを考えると、さらに多くの検索に耐えられるだけのパフォーマンスとスケーラビリティが求められる
そのため、パフォーマンスがリニアにスケール可能であること、無停止で運用可能な冗長構成が取れること、さらにこれを裏打ちする検索機能をそのコンポーネントごとに別のサーバで実行する機能や、事例を基にしたノウハウを持つ製品の選択が重要になる。
次世代の検索についてさまざまな観点から説明たが、検索にとって大事なのは、検索はあくまでもユーザーのためのものであるということに尽きる。これは次世代でもその先の未来でも変わらない視点といえるだろう。
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