涙をぬぐって歩を進めるオープンソース:「行く年来る年2007」ITmediaエンタープライズ版(2/2 ページ)
2006年12月31日にすべての活動を終了したOS/2に後ろ髪引かれる思いではじまった2007年。本年も、オープンソースの世界ではさまざまな出来事があった。
ハードウェアベンダーの動き
ハードベンダーでは、SunとDellのオープンソース戦略が報道されることが多かった。
Sunは2007年、Javaのオープンソース化に引き続き、Fortranの後継として設計されたプログラミング言語「Fortress」のほか、Niagara 2(UltraSPARC T2)の設計などをオープンソース化した。同社の一連の動きの裏には、Sunに移籍したDebian Projectの創始者、イアン・マードック氏(現在、Sunのチーフ・オペレーティング・プラットフォーム・オフィサー)などの活躍もありそうだが、オープンソース戦略で出遅れていた感があるSunだけに、今後どのように巻き返していくのかに注目したい。
一方、Dellは同社のカスタマーフィードバックに寄せられた要望を受け、UbuntuをプリインストールしたPCをリリースすることとなった。この動きで注目されるのは2つ。Dellのような大手のハードウェアベンダーがコンシューマー分野でもLinuxをサポートするようになったことと、ディストリビューションとしてのUbuntuの台頭である。
Ubuntu搭載PCとWindows搭載PCの価格差は50ドル程度であることから、多くのユーザーは「50ドルくらいならWindowsを……」という選択肢を選ぶかもしれない。しかし、ユーザーニーズがあることを理解し、その選択肢を用意するDellの動きは評価されてよい。
今年大幅に認知度が上がったUbuntuにとっても、Dellの目に止まったことは幸運だろう。順調なリリースや使いやすさの面でWindowsからの乗り換えを一般ユーザーでも現実的な選択肢にまで落とし込んだUbuntuは、今後ますます影響力を増していくと思われる。2008年4月には、Ubuntu 6.06に続く2回目のLTS(Long Term Support:長期サポート)となるUbutu 8.04のリリースが予定されている。ハードウェアベンダーからの支持を得ながら、デスクトップ分野でのUbuntuの人気はここ1年は安泰と言えそうだ。
そして最後に、2007年のオープンソース業界で最も多くの方の記憶に残っているであろう出来事として、itojunこと萩野純一郎氏の訃報(ふほう)には触れておかなければならない。IPv6関連をはじめとする同氏の多大な功績は、多くの方が記憶するところだろうし、これからも記憶されていくことだろう。直接にお会いしたことはないが、その恩恵にあずかっている1人として、深く感謝したい。
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