Yahoo!、モバイルプラットフォームの公開で苦境脱出なるか
Yahoo!は、Facebook的オープン戦略でサードパーティーを巻き込み、モバイル広告市場でのシェアを確保したい考えだ。
米Yahoo!は1月7日、米ラスベガスで開催中の2008 International CESで、モバイル向けのアプリケーション開発プラットフォーム「Mobile Developer Platform」を発表した。また、コンシューマー向けの新しいモバイルサービスプラットフォームやモバイル向けWebページの新しいデザインも発表された。
ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の米FacebookがプログラマーによるSNSアプリケーションの開発を支援するために自社の開発プラットフォームをオープン化したのと同様、Yahoo!がMobile Developer Platformを公開する狙いは、Yahoo! Mobile Widgetsと呼ばれるモバイルアプリケーションを開発するためのツールを開発者に提供することだ。Yahoo! Mobile Widgetsはスマートフォンをはじめとする各種の携帯端末を介してモバイルWebサービスを利用するためのコンシューマー向けのアプリケーションだ。
Mobile Developer Platformで提供されるツール群を使えば、開発者は作成したウィジェットを直ちにWebで公開できる。
Yahoo!の声明によると、ユーザーはYahoo! Widget GalleryからMobile Widgetsを選択できるという。Yahoo! Widget Galleryは、Yahoo! Go 3.0と新しいモバイル向けWebページから利用できる。1月7日の週以降、ユーザーはYahoo!のパートナー各社が作成したウィジェットを介して、携帯端末からeBayの入札を行ったり、MySpaceのメールをチェックしたり、MTVの最新ニュースを閲覧したりできるようになる。
携帯端末メーカーの韓国LG Electronicsと米Motorolaは現在、幾つかの端末をYahoo! Mobile Widgetsに対応させるための作業に取り組んでいる。
Yahoo!、Google、およびMicrosoftの3社は、「何十億ドルものオンライン広告を生み出す次なる大きな市場」としてモバイルインターネットの分野に期待を寄せている。この分野の取り組みは、とりわけYahoo!にとって大きなメリットをもたらすかもしれない。同社はここしばらく財務的に低迷しており、最近は組織再編を進めるなどして、市場のニーズに素早く対応できる、より競争力の高い企業への成長を目指している。
またYahoo!の新しい開発プラットフォームは、Googleの携帯電話プラットフォーム「Android」とも競合することになる。Androidは検索や企業連係のほか、モバイルサービスの利便性を改善してくれる各種アプリケーションの登場を切望する何百万人もの携帯端末ユーザーをターゲットに、昨年11月5日に発表されたものだ。
米調査会社The Kelsey Groupの上級副社長でインタラクティブローカルメディア担当のプログラムディレクターを務めるマット・ブース氏は1月7日、eWEEKの取材に応じ、Yahoo!は長期的な見地からモバイル市場に期待を寄せていると指摘している。
「Yahoo!はモバイル市場で大きなシェアを誇り、多くの資産とコンテンツを保有している。Yahoo!は格好のポジションにつけており、それをうまく活用できる立場にあると言えそうだ」と同氏。
また同氏によると、GoogleがAndroidで果たそうとしている野望や同社が700MHz無線周波数帯のオークションへの参加を予定している点などからして、今のところ、Yahoo!はGoogleほど大きな脅威とは受け止められていないため、その分、Yahoo!には通信キャリアに交渉を持ち掛け、提携を交わせるチャンスがあるという。
Yahoo! Go 3.0の早期β版
Yahoo!はさらに1月7日、モバイルクライアントの最新版「Yahoo! Go 3.0」の早期β版を発表した。新版では、ユーザーインタフェースが改善されているほか、スタートページのパーソナライズがサポートされ、またMobile Developer Platformを使ったサードパーティー製ウィジェットの組み込みができるようになっている。
またYahoo! Go 3.0の新しいHomeウィジェットでは、例えば、新着メールの件数、カレンダーに記録されている今後の予定、Flickrに投稿された新しい写真など、最後のアクセス以降に更新された最新の情報が表示されるようになっている。
Yahoo! Go 3.0はYahoo!にとってモバイル分野の稼ぎ頭でもある。Yahoo! Go 3.0では、Yahoo!のグローバルな広告主各社の広告がユーザーの端末に表示され、そうした広告をクリックすれば、ユーザーと広告主とがインタラクティブにやり取りできるようになっている。広告主に直接電話がつながる場合もあれば、広告主が提供するサービスについてさらに詳しい情報が提供される場合もある。
米調査会社IDCのアナリスト、カーステン・ワイデ氏によると、向こう5〜10年間は動画広告に続いてモバイル広告が最も多くの利益を上げることになる見通しという。
同氏は1月7日、eWEEKの取材に応じて次のように語っている。「モバイル広告は、デジタル市場を長期的に支配できるかどうかを左右する決定的な戦いの場となるはずだ。もしYahoo!が新しい開発ツールを多くの開発者に支持してもらい、多くのパブリッシャーに『携帯端末向けのコンテンツをYahoo!を介して公開したい』と思ってもらうことに成功すれば、それはYahoo!にとって大きな前進となるだろう」
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