Oracle、2回目の試みでBEAの買収に成功――買収金額は85億ドル
OracleによるBEA買収の狙いは、Fusionおよびプラットフォーム市場の将来性だと考えられるが依然として不透明な面がある。
結局、BEAにとってOracleがベストなバイヤーだったわけである。OracleがBEAに対して最初に買収提案を行ったのが2007年10月で、その後、OracleとBEAおよび同社の筆頭株主であるカール・アイカーン氏の間で熾烈な戦いが繰り広げられたが、両社は1月16日に合併に合意した。
OracleがBEAの買収に支払う金額は85億ドルで、これは最初の提示額の66億6000万ドルを14%上回る。BEAはOracleの最初の提案後、買収金額の上乗せを主張して譲らなかったが、この作戦は見事に成功した。
しかし、当初の両社間の混乱した合併交渉の中で浮上した疑問はまだ解決されていない――BEAのミドルウェア技術の獲得は、Oracleが3年前に投入したFusion Middlewareスタックにどのような影響を与えるのか、Fusion Middlewareの手直しはFusion Applicationsにとって何を意味するのか、そして最後に残った独立系ミドルウェアプロバイダーであるBEAをOracleが獲得したことで、IBMやMicrosoft、HP、SAPなどが主導権争いを繰り広げているプラットフォーム市場にどんな影響を及ぼすのか、という疑問である。
1月16日朝に行われたアナリストとプレスを対象とした電話会見で、Oracleのラリー・エリソンCEOは、「BEAの買収は、各業界分野を通じてあらゆる層の顧客に選ばれる戦略的ベンダーになるという当社の構想の実現に向けた非常に大きなステップである。この取引により、技術スタックをベースとする当社のオープンな標準は、Microsoft、IBM、Sun、オープンソースベンダー各社を含むほかのどのベンダーよりも大きな価値を提供するようになる」と事前に用意された原稿を読んだ。
エリソン氏によると、両社は多数のミドルウェア製品を持っているが、BEAの製品ラインおよび同社が進出している業界分野は、OracleのFusion Middlewareプラットフォームに対して「極めて補完的」なものだという。
「ほんの2例を挙げると、この取引が締結されるや否や、われわれはメッセージングとトランザクション処理のプラットフォームのリーダー、そして通信分野におけるリーダーになった」とエリソン氏は語る。
BEAのアルフレッド・チュアング会長兼CEOによると、この取引は株主価値の最大化を目指した「入念で思慮深いプロセス」が成就したものだという(筆頭株主のアイカーン氏は、当初の提示価格でOracleに売却するようBEAに要求していた)。
「ラリーが話したように、両社のビジネスは自然な補完関係にある。Oracleはデータベースとアプリケーションの分野に強みがあり、BEAはミドルウェア分野のリーダーである。われわれがこの13年間でBEAにおいて達成したことを誇りに思っており、当社のリーダーシップが合併後の会社に重要な貢献をするのを大いに期待している」とチュアング氏は語る。
Forresterのアナリスト、レイ・ワン氏によると、OracleによるBEA買収の本質は、Oracleの長期的な合併・買収戦略が、アプリケーションとミドルウェア関連で最大のインストールベースを獲得し、データベースの販売拡大を狙ったものであるということだ。
「MDM(マスターデータ管理)、ビジネスインテリジェンス、ポータル、BPM(ビジネスプロセスマネジメント)、各種の情報管理ツールなどのミドルウェアプラットフォームの主戦場で業界再編が加速すると予想される」とワン氏は話す。
「SAP、IBM、HPなどのベンダーもOracle以上にBEAを必要としている。SAPのNetWeaverは、最も強固なエコシステムの1つだが、ミドルウェアプラットフォームとしては最も非力な部類に属する。IBMは、Oracleによるミドルウェア分野の支配、ならびに個別業界向けサービス製品をソフトウェアソリューションとしてコモディティ化するというチャレンジを脅威に感じるだろう。HPはこれを機に、市場での勢力拡大を目指す可能性がある。独立したプラットフォームとしてのBEAを中心として長期的な戦略を構築してきたシステムインテグレーター各社は、BEAを支援しようと考えるかもしれない」(同氏)
AMRのリサーチアナリスト、デニス・ゴーハン氏によると、OracleとBEAには重複するミドルウェア製品がたくさんあるが、Fusion MiddlewareやFusion Applicationsにすぐに影響が及ぶわけではないという。Fusion Applicationsは、Fusion Middleware上で動作するOracleの次世代のアプリケーションスイートである。
「OracleがFusion Middlewareを使ってFusionアプリケーションを結び付けるのはずっと先のことであり、BEAの買収の影響はほとんどない」とゴーハン氏は指摘する。「Oracleの真の狙いは顧客ベースの構築にある。Oracleが最も避けたい事態は、アプリケーション分野の構想が崩れることだ。彼らは、Fusion戦略を受け入れる顧客を確保したばかりであり、顧客が使用するミドルウェアに関してすぐに大きな変更を促すようなことはしないだろう」。
Celentの財務アナリスト、バート・ナーター氏によると、BEAの買収は、OracleのSOAソフトウェアであるFusionプラットフォームのミドルレイヤにベスト・オブ・ブリードの機能を提供するものだという。「Oracleはこの分野で後れを取っていた。彼らは、自社で開発できないときは買収する。Oracleはこの買収により、SOAインフラを大企業に提供する競争でIBMやSAPなどの企業と対等に戦うことができる」と同氏は電子メールで述べている。
ワン氏が指摘するように、Oracleはミドルウェアプラットフォーム市場の支配を狙っている。ミドルウェアプラットフォームは、ソフトウェアエコシステムの各要素を結び付ける役割を果たすからだ。
「各ベンダーのソリューションの仕上げは、強力なミドルウェアツール、そしてベンダーに代わってプラットフォームを構築、拡張する個人およびソリューションプロバイダーのコミュニティーにかかっている」とワン氏は話す。「どのベンダーが将来のプラットフォームを所有するにせよ、ミドルウェアをベースとする『アプリストラクチャ』やSalesForce.comなどのSaaSプラットフォームが、ポストインターネット時代の勝者として登場するだろう。また今回の買収により、スタンドアロン型ミドルウェアソリューションとしてのSAPのNetWeaverの役割が低下する一方で、OracleはIBMと直接競合するようになる」。
OracleによるBEAの買収は、ほかのベンダーからさらに有利な条件の提示がなければ、BEA株主の承認および規制当局の承認を経て、2008年半ばに完了する見込みだ。
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