最初に退職を告げる相手を吟味する
転職希望先から採用をもらった瞬間には、好条件の会社に移ることを隣の席の同僚に自慢したくなるのが人間だ。しかし、これは順番が違う。
まずは自分の監督責任者や直属の上司に退職の意思を示し、彼らがほかの社員から話を聞くなどというまぬけなことが起こらないよう、注意したい。
引き留めに備える
ひょっとしたら、会社に残るなら待遇を改善すると、経営側から申し出があるかもしれない。こうした可能性に鑑みるに、真実ではない退職理由を上層部に伝えるのは、非常にまずいことだと言える。
「慰留するかしないかは、企業によって異なる。社員が辞めると言えば辞めさせる方針を貫いているところもあるし、引き留めるためにとりあえず交渉を持ちかけるところもある。周りには給与アップを転職理由としているが、実はほかにも動機がある場合、後者のタイプの企業が昇給を打診してきたときに退路を断たれてしまう」(ボッセ氏)
退職までには2週間の猶予を
妥当な退職通告期間(一般的には、1年間に取得できる休暇日数に相当する)が過ぎていないのに、転職先からすぐにでも仕事を始めてほしいと請われるケースをよく見聞きするが、これに応じるのは賢明ではないと専門家は言う。実際、会社を去る人間が絶対にやってはならないのが、時間的余裕をほとんどあるいはまったく持たずに退職することだ。
IT人材紹介会社AAIの共同設立者で、プリンシパルでもあるジャック・ハリントン氏は、「ある社員に得意客を担当させ、大きな取引をまとめさせている最中に、突然明日にでも会社を辞めると言われたら、そのまま行けば簡単に取れるはずの契約を逃してしまう。退職の意思を前もって会社に伝えず、プロジェクトを傾けるような人間は、わたしなら雇いたくない。今後の商売も危うくなるからだ」と話している。
引き継ぎ計画を詰める
正式に退社が決まったあかつきには、後任者と話し合い、それまで取り組んでいた仕事に支障が出ないよう手配を済ませて、社内でのスムーズな引き継ぎを図る。
「こうした計画作りは、プロセスを考えるのに慣れている技術系社員にはお手の物だろう。完ぺきな“TO DOリスト”を作成し、表にするのだ。このとき大事なのは、プロジェクト指向を心がけることである」(ブラウン・ボークマン氏)
自分の仕事に興味を持っている社員を知っているなら、後任として名前を挙げるのもよい。
「仕事を引き継いでもらうのにふさわしい人物がすぐに思い浮かぶのは、技術畑ならではのことだ。自分と面識があり、自信を持って後任に推薦できる人材を示唆できれば、引き継ぎ候補探しや研修などの手間を厭う会社に迷惑をかけずに済む」(ブラウン・ボークマン氏)
立つ鳥跡を濁さず
最終出社日は、勤務時間中に居眠りをしたり、すでに退社した気分になったり、間もなく手を離れる仕事をないがしろにしたりしないよう、慎重に振る舞おう。
「あまり仲のよくなかった人々にも、退社の挨拶はするべきだ。イメージアップを図る最後のチャンスなのだから。この先、何が起こるか分からない。解決できる問題は、この機を逃さず解決しておこう」(ブラウン・ボークマン氏)
「立つ鳥跡を濁さず」と、ボッセ氏も退社時の心構えを簡潔に説いている。
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