上野康平――3次元空間を統べる若き天才プログラマー(完全版):New Generation Chronicle(3/9 ページ)
ソフトウェアとハードウェアの両方に精通し、世の中を変革しようと牙を研ぐバイナリアンたちを紹介していく「New Generation Chronicle:バイナリアンスレッド」。第1回の井上さんからバトンを引き継いだのは、史上最年少の18歳で天才プログラマー/スーパークリエータの称号をIPAから贈られた上野康平さんの完全版をお届けする。
レンダラが向かうのは「感覚的に正しいレンダリング」
―― レンダラの魅力に取りつかれたきっかけはどのようなものですか?
やはり結果が視覚的に分かるのが、ほかのプログラムとは違って面白いですね。
―― 既存のレンダラの問題点はどこで、自身が今研究しているものはそれをどう解決しようとしているのか、一般人でも分かりやすく説明してみてください。
わたしが作ったレンダラは、土台がボロボロな既存のレンダラを一度作り直す必要があると感じて開発しました。
既存のレンダラの問題点は、材質の物理的性質としての効果なのか、演出手法としての効果なのかを区別せずにレンダリングを行っていることにあります。きちんと両者を分離して計算することで、写実的CGに特化した手法を一般的なCG制作に幅広く使用することができます。
―― 自分が今研究しているもので、既存の技術(や世界)はどのように変わり得るのか、普通の人がイメージできるような例え話をしてみてください
映画Matrixの中の世界に一歩近づいたことになります。というとはぐらかしたように聞こえるかもしれませんが、そもそも今のレンダラって土台がボロボロなんですよ。そこを一度作り直して、レンダラの計算を正しくやりましょう、というのがわたしが開発したものの肝だったりするので。
―― 物理ベースレンダリングを前提とした世界は今後も続くと思いますか?
物理ベースレンダリングは研究としては既に1つの限界点に達していると思います。次に来るのは、「不気味の谷」を超えた、感覚的に正しいレンダリングではないでしょうか。
―― 巨大なコンピュータリソースが与えられたらどんなことがしてみたいですか?
やっぱりレンダリングでしょう。
―― 優れた開発者とチームを組んで何か大きなプロジェクトを行うとすれば、どんなものを?
やっぱりレンダリングでしょう。
―― ゲームや映画などCGを利用する業界に向けて何か伝えたいことがあれば
遅くとも今年中にはnytrをバイナリで配布しますので、いい感じのレンダリング結果などができたらぜひ送ってもらえればと思います。また、現在シーンデータの調達に非常に苦労していますので、何か「開発に使っていいよ」という作品があれば、歓迎します。
―― ARToolKitを使ったAR(Augmented Reality)プログラミングをみてどう思いますか?
ARToolKitにはあまり魅力を感じませんが、AR技術自体には期待しています。眼鏡シート型のウェアラブルディスプレイは欲しいなぁ。
―― これを読んでおくと幸せになれるという開発者必携の一冊を教えてください。
レンダラ開発を始めてみようという方に、以下の4冊を。
- Physically Based Rendering
「省メモリ」な用途でなくても、普遍的に役立つようなデータ構造が書かれています。 - 省メモリプログラミング―メモリ制限のあるシステムのためのソフトウェアパターン集
基本的な近代レンダリング理論が書かれています。実装例も一緒に載っているので分かりやすい。 - Windowsプロフェッショナルゲームプログラミング
これも、ゲームプログラミングと題はついていますが、一般的に使えるようなアルゴリズムばかりです。絶版になってしまったのが残念。Windowsプロフェッショナルゲームプログラミング2もお勧めです。 - Modern C++ Design
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