「デジタルネイティブ」が創出する新たな成長モデル:コンテンツ産業(2/2 ページ)
世界第2位のメディアコンテンツ市場を抱える日本。専門家は2010年以降のコンテンツ消費は幼い時期からインターネットに慣れ親しんだ「デジタルネイティブ」が新たな担い手になると予測する。
4大メディアもネットへのシフトを強化
コンテンツ王国アメリカでも、4大メディアコングロマリットのニューズコーポレーション、NBCユニバーサル、ディズニー、CBSが、旧4大ネットワークのNBC、ABC、CBS、FOX TVを傘下に収めて流通ウインドウを囲い込む中、一方的にブロードキャスト型で配信する従来のビジネスモデルを見直そうという動きが出ている。
YouTubeをはじめとしたUGM(ユーザー生成メディア)が登場し、広告モデルによる無料コンテンツ配信や、検索型視聴に伴う有料コンテンツ配信が成功していることで、ようやく4大メディアもオンラインを新たなコンテンツウィンドウとして評価し始めた。
CBSは、ローカルのテレビ10局とラジオ39局を売却する傍ら、著作権処理した番組をオンライン放送する「joost」への出資や、YouTubeと提携するなど、ネットメディアへのシフトを強めている。最終的にはCBS.comに誘導し有料で見てもらうという戦略だ。
07年10月末に米ハリウッドで開催された「Digital HollywoodFall 2007」でも、UGMが既存メディアに与える影響が議論された。主な論点には、パッケージ化したコンテンツビジネスが終焉しつつあることや、広告モデルがマスから消費者個別の行動を基にしたターゲティング広告へと変化し、これからの広告のトレンドになっていくというものがあった。
また、オンライン時代のコンテンツの姿として、10分以内の短尺の視聴パターンが好まれる傾向や、独立したクリエイター自身によるニッチコンテンツ配信の可能性も強調されたという。
デジタルネイティブがコンテンツ消費を促す
「『デジタルネイティブ』が、10年以降のコンテンツ消費の新たな担い手になる」と予測するのは、NRIのコンピューティング事業本部で情報・通信コンサルティング部の主任コンサルタントを務める北林謙氏。携帯電話、インターネット、音楽プレーヤーに囲まれ、多感な時期を過ごした世代のコンテンツ消費を促進し、産業として成長できるようなメディアの開発が期待されるという。
その一方で、日本のコンテンツ産業には、付加価値配分のゆがみによるコンテンツ製作機能側に十分な資金が回っていない現実がある。北林氏は、そのようなボトルネック資源のメディアを掌握する争いから、コンテンツを軸に質で勝負する「クリエイティブ産業」への再編が望ましいとし、それにはメディア機能がコンテンツの製作までを抱え込む垂直統合モデルから長期視点でのメディア融合モデルにシフトすることが必要だという。
幸いにも日本にはコンテンツの企画力、デジタル技術、ブロードバンド環境などが揃っており、各ジャンルのコンテンツの質が平均的に高い。プロ・アマ問わずクリエイター層が厚いのも大きな強みとなっている。コンテンツファイナンスが浸透するスキームを整え、潜在的投資需要を引き出せれば、日本のメディアコンテンツ産業は新たな段階に踏み出すことができるだろう。
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