解釈の誤り? 孫子に学ぶ危機管理の在り方とは:RSA Conference Japan 2008(2/2 ページ)
経営哲学で語られることの多い古代中国の兵法家・孫子。だが、日本人は解釈を誤り、特に危機管理では世界の意識と大きく乖離(かいり)しているという。
なぜ情報を欲するのか?
国家の安全保障を実現するアプローチとして、小川氏は「基礎問題」の克服と「応用問題」へ挑戦を提起する。同氏によれば、基礎問題とは災害や事故など、応用問題とは戦争や大規模テロだという。そして、「日本には国家の安全保障を図る存在がない」と指摘した。
その一例として、災害時における自衛隊派遣があると小川氏。「自衛隊の本質は対外的な脅威から国民を保護すること。災害レベルでは消防や警察、自治体などの役割であるはず」(小川氏)
米国ではこうした役割を果たす機関としてCIAなどの存在があるが、小川氏は「肝となるのは情報を収集・分析し、インテリジェンス(知識)として生産するシンクタンクのような機能。国内では謀略や工作機関をすぐに思い浮かべる人が多いが、まず情報を担当する機能が必要だ」と述べた。
安全保障を実現する情報の利用としては、「情報の要求」「情報の計画(何を知るか)・提示」「知識の収集」「知識の加工」「知識の統合・分析」「知識の配布」の6つのステップがあるといい、これらをサイクルとして回すことになると小川氏は紹介した。特に情報活用の起点となる「要求」を行えることが重要だとしているが、「トップに立つ人に日本人でこれができる人は少ない」(小川氏)という。
先に挙げた孫子の言葉「戦わずして勝つ」を実践していると小川氏が指摘する米国の外交では、このような正確な情報の入手から知識の生産のフレームワークが機能しているという。
「例えば、中国の国防費が増えると日本はむやみに脅威だと騒ぐが、米国では実態を正しくとらえ、両国にとって利害バランスの取れた関係を築いている。日本にもこうした関係作りが必要だろう」(小川氏)
最後に小川氏は、情報セキュリティ対策の観点について「企業における危機管理と情報セキュリティにも同じことが言える。脅威の本質を見極め、プラスに働いていくためにどのように情報と知識を利用するか考えるべき」と締めくくった。
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