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コラム

マネジメントに見られる「タイタニック現象」――問題先送りと慣性IT Oasis(1/2 ページ)

自動車も新幹線も急には止まれない。氷山と衝突した豪華客船タイタニック号もそうだった。一瞬の判断の遅れが悲劇を生む。これは経営やマネジメントにも当てはまる。

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 イギリスで建造された豪華客船タイタニック号は大西洋横断の処女航海で氷山と衝突し沈没した。有名な話で映画にもなったのでご存じの方も多いと思う。筆者は企業がある状態になったときに、その状況をタイタニック状態と呼ぶ。それがどういう状態かは後で説明することにして、組織における変革について考えてみたい。

組織の慣性と「能力のわな(Competency Trap)」

 時速300km/hで走行している新幹線は急ブレーキを掛けても4km先まで止まらないそうである。慣性があって急には止まれないし。無理に止めれば加速度がかかって乗客が危険な状況になる。新幹線の乗客は4km先まで数分の未来が確定していることになる。

十分成熟した組織にも似たような慣性がある。

 たいていの企業は何日間分かの受注残を持っている。工場では仕掛品が工程移動している。完成在庫や仕掛在庫を持っていることもあるだろう。営業は注文につながりそうな案件を受注につなげるべく飛び回っている。それらは会社が継続して存続することを前提とした活動である。活動が安定して継続し、満足すべき収益も上がる状態は組織にとって心地よい。昨日した事を今日も実行し、明日も繰り返せばよいのである。何か学ぶ必要はないしリスクもない。

 こうした状況を「能力のわな(Competency Trap)」と呼ぶ。現状に満足してしまうので、現状を変更する可能性の探求や改革する行動は生まれない。また、改革案があっても意思決定者は改革にかかるコストやリスクを考慮して不作為を決め込んでしまう。仮に改革を考えたとしても、本業が忙しくて改革に必要なリソースを確保できない。

 つまり、業績が好調な時は守りに入ってしまい現状維持志向になりやすいのだ。それでは業績が悪化した時はどうなのか。このときもいろいろな状況が発生する。

 何か不具合や不吉な前兆が起こったとしても積極的に対策を取るのではなく、見なかったことにして水平線の向こうに押しやり決断を先送りしてしまうことがある。水平線効果である。

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