中古パソコンは企業向けに広がるか:Weekly Memo(2/2 ページ)
今回は、中古情報機器協会が6月25日に発表した2007年度の中古情報機器の販売台数実績などから、好調・中古パソコンがもたらすさまざまなインパクトを探ってみたい。
中小企業やSOHOが導入へ
同協会では同時に、中古情報機器の流通による07年度の二酸化炭素(CO2)削減への貢献値を試算し、年に135万2000本の樹木がCO2を吸収するのと同じ削減効果があったとしている。新品を作る場合の石油使用量などを考慮すると、CO2排出量削減効果は20万9736トンにも上ると試算している。なお、これにはパソコン、ワークステーション、サーバに加えて、液晶およびCRTディスプレイ装置、ビジネス用プリンタ・コピー機、デジタルカメラも含まれている。
このように環境対策にも効果を発揮することから、同協会では「中古情報機器の活用が、使用済み情報機器の再利用や情報機器の長寿命化につながるだけでなく、廃棄物の発生抑制やCO2排出削減といった環境・循環型社会への貢献にもつながる」(小澤氏)と強調している。
さて、あらためて中古パソコンの販売先に目を向けてみよう。同協会によると、07年度の実績では個人向けが30%、企業向けが15%、残りが卸業者だった。この割合で興味深いのは、個人向けが前年度とほぼ変わらなかったのに対し、企業向けが前年度の10%から15%に拡大していることだ。また、割合の大きい卸業者から先の流れは同協会でも把握できていないというが、その中にも企業向けが相当数含まれていると推測される。
つまり、中古パソコンの販売先として、個人向けより企業向けのほうが伸びつつあるのだ。その要因について小澤氏は、「コンピュータの導入コストを切り詰めている中小企業やSOHOから、価格の安い中古パソコンへの需要が高まっている」ことがあげられるという。そしてこの動きは、台数こそ少ないものの、07年度に中古品として6万台が流通されたサーバも同様のようだ。
とはいえ、企業が中古パソコンを導入するうえで気になるのはOSの対応だ。いまパソコンのOSは、Windows XPからWindows Vistaへ切り替わろうとしている。しかし、企業向けについては必ずしも、それを主導するマイクロソフトの思惑通りには進んでいない。そのためマイクロソフトはさまざまな切り替え策を講じているが、はたしてその動向がどうなるか。それが中古パソコンの企業利用にも少なからず影響を与えるのは間違いなさそうだ。
そうしたパソコン特有の事情はあるものの、長い目でみれば、中古品は一定の割合で市場を形成することになるだろう。それは、企業向けにおいても然りである。
プロフィール
まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。
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