メールやチャットは却下――IT変更管理はオフラインで:ITIL Managerの視点から(1/2 ページ)
社内ITインフラの変更管理に有効な手段「変更諮問委員会の設置」という手法を紹介する。
前回、社内インフラには変更が不可欠であり、変更を効果的に行うためにはRFC(Request for Change)とCAB(変更諮問委員会)の設立が有効だと述べ、RFCについて解説した。今回はCABを詳しく説明したい。
CAB(Change Advisory Board:変更諮問委員会)
日本語では「変更諮問委員会」という。ビジネスの観点でRFCを評価し、変更を認可したり、変更の優先順位を決定したりする会議体である。
CABは、提出されたRFCについて、主にビジネスに与えるインパクト、技術的なインパクト、リソースに与えるインパクトという観点からさまざまに評価する(図1)。具体的には、次のような観点で評価することになる。
- 変更が会社の事業そのものに与えるインパクト
- SLAで定義されているITサービスに影響はないか
- キャパシティやパフォーマンスに関するインパクト(これもSLAが基準になる)
- 可用性やセキュリティに関するインパクト(これもSLAが"よりどころ"となる)
- 変更を加える構成要素内で動作している、ほかのITサービスへのインパクト
- 変更を導入しないことに対する影響
- 変更の実装に必要なITリソース、人的リソース
- 変更の実装に必要なコストとその負担先
複数の似たような変更を1つにまとめたり、ビジネスに与える影響は異なるが変更対象となるITインフラが同じである変更を同時に行ったり、といった調整もCABの役割である。また、ビジネス上その変更を正当化できない変更に関しては却下することも必要である。中には「ついでだから」ということで、ビジネス上特に必要のない機能強化がしたたかに盛り込まれていることがある。例えばビジネス上は通常のモノクロレーザープリンタの購入でかまわないのに、どうせ買うのだから、とカラーレーザープリンタの購入が提案されることもあるだろう。そのような場合、ビジネス的な観点でその変更に正当性を見出せるかどうかをわきまえるのも、CABの重要な役割である。
CABのメンバは場合によって異なるが、おおむね次のような職務の人がメンバに加わることになる。
- 変更マネージャ
- 顧客(経営者層)
- ユーザ(ITサービス利用者)の代表者
- 財務担当者
- アプリケーション開発スタッフ(必要があれば)
- 技術専門家
- サービススタッフ(必要があれば)
- 契約業者(必要があれば)
- 問題管理のマネージャ(いれば)
- サービスレベル管理のマネージャ(いれば)
CABには、その変更を加えるにあたってのビジネスインパクトを正確に分析できる人、技術にあかるい人、経営者層、利用者の代表、そして自社の財務に詳しい人を含めるのが望ましい。
実際にCABを召集するのは、変更マネージャの仕事である。また変更マネージャは、CABの議長を務め、評価すべきRFCをCABに提出するという役割も果たすことになる。
緊急度の低いRFCや大きなコストやインパクトが発生しないであろうと変更マネージャが判断したRFC、あるいは逆にビジネス上必要不可欠なRFCはCABを召集する必要はない。
また、緊急にCABを召集したいと思っても、本来のメンバ全員が何らかの事情(主に仕事が忙しいという理由)で参加できない場合にそなえて、「最低でもこの人だけは出てもらう」というような人物は、あらかじめ選定しておこう。
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