ソフトウェア開発者必見のWorkbench Linuxディストリビューション:Programing Bible
Xubuntuをベースにして作られているWorkbenchは、開発者にとって有用なユーティリティとアプリケーションを豊富に用意している。特にソフトウェア開発に興味のあるユーザーの場合、その有用性はいちじるしく高いものとなる。
Workbenchは、FOSSツールを活用したアプリケーション構築に携わっている開発者にとって、理想的なLinuxディストリビューションの1つと評していいだろう。しかもこれは各種の開発ツールを網羅したディストリビューションというだけでなく、日常的な用途に使うアプリケーション群や外観を彩るための小物類もバンドルされているため、通常のデスクトップ用途に供したとしても、まったく場違いではないのだ。
Workbenchは、Ubuntuのデスクトップ環境をXfceに置き換えた派生フレーバの1つXubuntuをベースにしているが、Xubuntuとは異なり、一般的な容量700MバイトのCD-ROMに収録可能なサイズには収まっていない。各種の開発用ツールと生産性アプリケーションを満載したWorkbenchは、実に1.4Gバイトというサイズに到達しているのだ。このディストリビューションの入手法については、低速ではあるが配布元のサーバから直接ダウンロードするか、BitTorrent経由で取得できるようになっている。
Workbenchの場合、HDD上にインストールするだけでなく、ライブDVDとして直接実行させることもできる。インストールする場合は、Xubuntuの標準インストーラがそのまま流用されているので、操作性の面で特に問題となる個所はないはずだ。なおWorkbench専用のフォーラムは設けられていないので、同ディストリビューションのインストールにかんして何らかのトラブルに遭遇した場合は、XubuntuまたはUbuntu系のフォーラムを参考にするしかない。
Workbenchというディストリビューションは、ドキュメントのたぐいは何も用意されておらず、前述したように専用のサポート組織も整備されていないため、一見すると開発者の1人が自分が個人的に必要とするツール群をひととおり取りそろえたものを公開しただけのホビープロジェクトの1つと見なせなくもない。ところがこのディストリビューションの場合、お遊び目的のプロジェクトと割り切ってしまうにしては安定性と軽量性が飛び抜けており、例えば1.33GHz Celeronと1Gバイトのメモリしか装備していないラップトップであっても問題なく動作してしまうのだ。具体的な動作速度は、ベースとなったディストリビューションよりも遅くもなければ速くもないといったところである。
そしてこのディストリビューションについて語るのであれば、その主題である開発用アプリケーションの豊富さを取り上げなくてはならない。ここには、オンラインおよびオフライン双方の形式によるソフトウェアの開発と試験に必要なツール類が、潤沢なまでの品ぞろえで取りそろえられているのだ。WorkbenchにパッケージされているコンパイラとIDEの充実ぶりについては、プログラミング言語と開発環境のほぼすべてが網羅されているといっても過言ではない。例えばC/C++開発者用には、GNU C Compiler(GCC)およびAnjuta IDEが用意されている。同じくEclipseプラットフォームは各種プログラミング環境用のものが同梱されており、その中にはJavaも含まれているが、そのほかの選択肢としてSun JDKおよびNetbeans IDEも利用できるのだ。C#開発者の要望はMonoDevelopで賄えるであろうし、Pascalコードを扱うメンテナであればLazarus IDEを、ユーザーインタフェース開発者であれば、GladeおよびwxGladeを使えばいい。
WorkbenchにパッケージされているのはコンパイラとIDEだけではなく、開発者にとって有用なユーティリティとアプリケーションも同梱されている。具体的には、Perl式の正規表現に対応したグラフィカル検索/置換ツールであるregexxer、基本的なIDE機能を兼ね備えたテキストエディタであるGeany、操作性に優れた統一モデリング言語(UML:Unified Modeling Language)エディタであるUmbrello、グラフィカルクライアントを装備したSubversionなどが利用できる。
Webアプリケーションの開発、試験、調整を行う開発者であれば、Apache Webサーバ、MySQLデータベース、PHPおよびPerlスクリプト用インタプリタをオールインワン形式で取りそろえたWebサーバパッケージのXAMPPに引かれることだろう。
次にPHP関連の作業に目を向ければ、HTMLおよびCSS(Cascading Style Sheets)の編集にも対応したgPHPEditというIDEがバンドルされてているほか、BluefishおよびKompoZerというHTMLエディタ、CSSの編集と検証機能を有すCssedエディタが利用できるようになっている。
なおPerlに関しては専用エディタが用意されていなかったので、今回わたしは、EPICプロジェクトから提供されているEclipse用のPerl機能拡張をWorkbenchに追加してみた。ところがHDDにインストールした場合にせよ、ライブCD形式でWorkbenchを起動した場合にせよ、この機能拡張追加後のEclipseは必ずフリーズしてしまい、強制終了させるしかなかったのである。もっともこれは唯一の例外であり、そのほかのIDEおよびアプリケーションはいずれもトラブルフリーで動作している。
プログラミング関係以外の同梱アプリケーション
ここまで触れたツールはプログラマー用のものばかりだが、これら以外にもWorkbenchには、WebブラウザのFirefox 3、電子メールクライアントのThunderbird、インスタントメッセンジャのPidgin、FTPクライアントのFileZilla、BitTorrentクライアントのTransmissionといった、マルチメディア系および日常作業用のアプリケーションも用意されている。そのほかにもオフィススイートであればOpenOffice.org、ワードプロセッサであればAbiWord、スプレッドシートであればGnumericを使用すればいい。
マルチメディア系ファイルについては、Workbenchの場合、MP3などの制限つきフォーマット用のコーデックをパッケージ化したubuntu-restricted-extrasが同梱されている。再生用アプリケーションとしては、VLCメディアプレーヤ、Rhythmboxオーディオプレーヤ、Totemビデオプレーヤが用意されており、そのほかにサウンドエディタのAudacityやオーディオフォーマット変換アプリケーションのSoundConverterなども使用できる。
最後に、Workbenchの外観に彩りを与えるソフトウェアについても簡単に触れておこう。こうした目的を追求するのであれば、例えばCairo-Dockというランチバーを実行させることもできるし、あるいはスクリーンレットを用いたデスクトップのカスタマイズを施すという選択肢も用意されている。
Workbenchはそれ自体が完成度の高い1つのディストリビューションだが、特にソフトウェア開発に興味のあるユーザーの場合、その有用性はいちじるしく高いものとなる。あるいはその位置づけは、通常のデスクトップユーザーが日常用途で使用するべきディストリビューションではないが、日常的に開発活動にいそしんでいるユーザーにとってのデスクトップディストリビューションとでも言えばいいのかもしれない。
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