Android携帯「T-Mobile G1」、専門家の反応は?(2/2 ページ)
G1発売の興奮が一段落した今こそ、業界の専門家がこのガジェットをどう受け止めているかを確認しておこう。
もっともな疑問だ。G1を使うためには、Google Webサービスのユーザーである必要がある。G1では、Google Searchのほか、Google Talk、YouTube、Gmail、Google Mapsなど、Googleのおなじみのサービスに簡単にアクセスできるようになっているからだ。これは、LinuxのようなオープンソースソフトウェアをベースとしたOSの精神に反するようにも思われる。だから、わたしもギリス氏の懸念は理解できる。
それでも、Google Androidの開発者であるアンディ・ルービン氏やGoogleの共同創業者であるラリー・ペイジ氏とサーゲイ・ブリン氏をはじめとする同社の幹部らは、Androidのオープン性をほかのスマートフォンとの差別化要因として特徴付けたいらしく、その点でのAppleとの違いをさりげなくアピールしたりしている。
だがIDCのアナリスト、シブ・バクシ氏はリサーチノートにおいて、オープン性のメリットは過大評価される可能性もあると指摘している。
結局のところ、コストを引き下げるため、そして相互運用性のためには、技術には標準が必要だということだ。OSに関しては、むしろ民主的なアプローチの方が、つまりベンダーがそれぞれ自由に調整を加えられる場合の方が、開発者にとってはコストの大幅な増大をもたらすことになりかねない。
わたしの印象では、恐らくGoogleは最終的には、どのサービスを利用できるかで携帯端末を差別化するようなことはしないのではないだろうか。Googleもユーザーの離反は望まないからだ。またG1はMicrosoftのWordファイルとExcelファイルはサポートするが、Microsoft Exchangeをサポートしないため、企業ユーザーに選ばれる可能性はほとんどない。この点については変更が必要だろう。
またバクシ氏が指摘しているように、G1ではデータの同期化が無線で行われるが、これはつまり、「連絡相手がまだGoogleアプリケーションを利用できない場合には不都合が生じる」ということでもある。
ただし同氏によれば、もしG1がユーザーやモバイル開発者の関心を引き付けることができれば、モバイルユーザーに自社の検索サービスやアプリケーション、広告を提供しようというGoogleの試みにとっては幸先の良いスタートとなる。
さらに同氏によると、今後はHTCだけでなく、MotorolaやSamsung、LGといったベンダーからさらに多くのAndroid端末が投入されるはずだ。「それがカギになるだろう」とOvum Researchのアダム・リーチ氏はリサーチノートで指摘している。
またモバイル事業者がどれだけ迅速にAndroidプラットフォームの支持に回るかは、Ovumも指摘しているように、ほかのAndroid端末でもG1と同様、Googleの各種サービスとの緊密な連係が図られるかどうかで決まってくるのだろう。現にiPhoneに関しては、「ネットワーク事業者による関与を制限する」というAppleのスタンスが一部のネットワークにとってiPhoneの魅力を減じる結果につながっている。
リーチ氏によれば、Androidが確かなプラットフォームとして認められるためには、多数の携帯電話メーカーの複数の端末に採用される必要がある。
モバイルメディアプラットフォームのプロバイダーであるAzuki Systemsの創業者、チョン・ウー氏によれば、G1や将来のAndroid端末向けに充実したWebサービスやコンテンツを用意できれば、Googleは対Appleの競争の波を乗り越えやすくなるはずという。
AppleはiPhoneをアプリケーションに至るまで厳しく統制している。一方のAndroidはオープンソースコミュニティーによるオープンな参加と開発によって革新される最小カーネルを推進している。どちらのアプローチが優れているかは、時間が経てば分かるだろう。だが、どちらのアプローチもサービスやコンテンツは目標のレベルに達しないかもしれない。いずれも広告と収益化には不可欠な要素だ。
「デスクトップでの情報やWeb体験をモバイルデバイスでも利用できるようにする必要がある」とウー氏は指摘している。モバイルWebサービスにもスナックのような手軽さが必要なのだという。いずれか特定のアプリケーションに束縛されることなく、短い期間にさまざまなアプリケーションをいろいろと味見できるようにするのだ。
またモバイルコンテンツは、よりパーソナルなものでなければならない。つまり、個々のユーザーにターゲットを据えるのだ。こうした課題はG1に限ったものではなく、スマートフォン全般に当てはまる問題だ。
「ユーザーにアプリケーションやコンテンツを押し付けるのではなく、ユーザーが気に入りそうなコンテンツでユーザーをもてなすようでなければ駄目だ」とウー氏は指摘している。同氏自身はiPhoneを使っているという。
Ovumのリーチ氏も同意見のようだ。同氏はAppleのApp Storeの成功に言及し、「Googleもユーザーが本当に使いたいと思うようなサードパーティー製アプリケーションの提供を促進する必要がある」と指摘している。
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