家の裏にスーパー、でも買い物はネットで:変わる消費者心理と小売ビジネス(2/3 ページ)
ネットスーパーや電子チラシが好調だ。生活必需品の高騰で買い控え傾向の強い消費者は、その購買意欲を店舗ではなくネット上の商品に向けている。低迷する小売業界では、こうした消費者心理を巧みにかぎ分け、新たなビジネスチャンスとして事業を展開する必要がありそうだ。
電子チラシで1円でも安いスーパーを探す
ネットスーパーの躍進と足並みを合わせるように、1円でも安い商品を探し回る消費者と、そうした消費者に商品の選択肢を与えようという動きが、インターネット上で顕著になっている。
凸版印刷が提供する電子チラシサイト「Shufoo!」が好調だ。Shufoo!は、折り込みチラシを電子化し、インターネット上で閲覧できるようにしたもの。
ユーザーは郵便番号検索や地図検索などから、店舗の電子チラシを無料で閲覧して、商品を見比べることができる。商品の購入には実際の店舗に行く必要があり、ネットスーパーのように電子チラシのサービスから商品を購入することはできない。
月間5000万ページビューを稼ぐ同サービスでは、ユーザーの増加に合わせ、登録店舗が約1万2000件を突破した。2005年の2000店舗と比べて、約6倍に跳ね上がった。
同サービスを手掛けた凸版印刷、情報コミュニケーション事業本部メディア事業開発本部事業推進部の山岸祥晃部長は「電子チラシが浸透し始めている」と手応えを語る。
電子チラシのサービスは2001年に始まったが、「当初は鳴かず飛ばずだった」と山岸氏は話す。ブロードバンド環境が未整備だったこと、電子チラシをPDFでしか表示できなかったことなどがサービス拡大の壁になった。
潮目が変わったのは2004年。イトーヨーカドーが全店舗で電子チラシの採用を決め、この動きにジャスコも相乗りした。「2大スーパーが採用に動いた」(山岸氏)ことで、認知度がじわじわと上がりだした。
こうした背景に、原材料高による生活必需品の高騰が重なったことで、ユーザーが食いついた。食材ごとの用意されたレシピを携帯電話に送信して買い物をしたり、自宅近辺の以外の電子チラシも検索できる。こうした機能の利便性から、リピーターを着実に集めている。
クリック率で陳列変更、リアルタイムの販促が実現
従来のチラシは「新聞に何枚チラシを折り込んだかが実績だった」(山岸氏)。だが、新聞の発行部数が徐々に減少するにつれて、「チラシにどれだけの効果があるかが厳しく問われるようになってきた」。
Shufoo!の売りの1つは、電子チラシの詳細な効果測定ができることだ。凸版印刷は、消費者が電子チラシをクリックした数によって、クリックの多い部分を赤色の濃淡で表示する「リアルトレンド」という分析サービスも提供している。採用した店舗の数は約1000に上る。
これにより、従来測定できなかったチラシの開封率や売れ筋の商品を調べられる。店舗側はクリックの多い商品に合わせて商品の陳列を変更したり、商品を入れ替えたりして、分析データに基づいた販売促進を展開できる。クリック数の多い商品をランキング形式で見せるなど、カスタマイズしたサービスを利用している店舗もあり、「前年の2.5倍の売り上げを出した」(山岸氏)店舗も出てきた。
「効果測定は、折り込みチラシの何百分の1のコストで実現する。従来スーパーなどがチラシに使ってきた販促費用に換算すれば3%以下」と山岸氏が言うとおり、電子チラシを掲載する企業側のメリットは大きい。「6000億円の規模とも言われる折り込みチラシ市場でも成長分野」と利益拡大に期待を込める。
ユーザーに商品を選ぶ機会をふんだんに提供し、安い店舗での購買を促す電子チラシは、小売業界の新たな販売促進の手法として、その存在感を高めつつある。
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