到達から探査、そして有人へ――火星探査今昔物語:日曜日の歴史探検(2/2 ページ)
有人火星探査が発表されて20年がたとうとしています。映画「WALL・E/ウォーリー」さながらに火星で人類を待つ火星探査機は、あとどれくらいで人類に再び会うことができるのでしょうか。
宇宙基本法が成立、日本はどうなる?
「のぞみ」。余談ですが、のぞみには、実に27万を越える名前が20枚のアルミ板に刻まれた形で搭載されていました。残念ながら名前が火星に降り立つことはありませんでしたが、永遠にその名は宇宙を漂うのです。何ともすてきな話ではありませんか(Image:JAXA)
一方、日本はどうでしょうか。「のぞみ(PLANET-B)」は日本初の火星探査機として世間の期待を一身に背負いましたが、度重ねるトラブルの末、2003年12月9日、火星軌道への投入を断念しています。結果だけ見ると失敗と言わざるを得ませんが、『恐るべき旅路 ―火星探査機「のぞみ」のたどった12年』などでは、あまり語られることのない裏側の様子が記されています。1ビット通信誕生のように、現場の過酷な状況が技術の進化を促した様子が見て取れます。
そして、「火星の進出は遅れた、よろしい、ならば金星だ」と考えたのかどうかは分かりませんが(実際にはPLANET-Bは当初、金星を目指す予定でしたし)、2010年に打ち上げ予定の「PLANET-C」では金星の観測を目的としています。
また、あまり話題になっていませんが、今年、宇宙基本法が成立・施行されています。国家的な宇宙開発戦略を推進する体制が整ったことで、今後の取り組みが注目されているところです。
航空宇宙産業では、基本的に長期のプロジェクトとなりますが、その時々の国際情勢などに大きく影響されます。あまりにも多額のコストが掛かるため、米国でも議会で却下され計画が中止になったものもあります。当然、実行に移されるプロジェクトであっても、現場は火の車だったりします。マーズ・エクスプロレーション・ローバのように、2機同時に打ち上げて成功確率を上げるような手法もコスト的に難しい状況にありますので、苦しい予算で最高の成果を、と現場の人たちは日々努力しているのです。あまり公になることはありませんが、映画「オネアミスの翼」のような現場が今も存在しています。
なお、上述したフェニックスですが、11月初めの交信を最後に連絡が取れなくなっています。これらのローバは機体上面に設置された太陽電池パネルから得られるエネルギーを動力としています。砂やちりなどで覆われてしまえば十分なエネルギーが得られなくなり、活動を停止しますが、スピリットやオポチュニティのように、当初90日程度と見積もられていた稼働期間が、気がつけば今日まで立派に稼働しているようなケースもあります。いつの日か、荒涼とした火星の大地で、スピリットやオポチュニティ、フェニックスに出会う人類も出てくるのでしょうね。彼らにとって幸いなのは、ウォーリーのように数百年も孤独に待たされることはないことでしょうか。筆者も火星への有人飛行が実現するところを目にしたいものです。
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