iSCSIが牽引する中堅・中小向けストレージ――大手ベンダーの動向は:アナリストが斬るITトレンド(3/3 ページ)
データの増大にともない、ストレージへのニーズも高まる中、各ベンダーからさまざまなストレージ製品が発売されている。今回は特に、中小・中堅企業向けストレージにおけるベンダーの動きを探ってみよう。
Exchange Server、SQL Serverのデータ移行ウィザードを搭載――日本HP
「MSA(Modular Smart Array)」と「EVA(Enterprise Virtual Array)」の2つのブランドを擁する同社だが、それぞれにおいて中堅・中小企業向け製品を提供している。
「MSA2000」はiSCSIとFC-SANをサポートしたエントリ製品で、100万円弱の価格から提供されている。「EVA4400」は同シリーズの特徴である仮想化機能を備え、約350万円からの価格で提供されている。さらに、中堅・中小企業向けにSAN、NAS、バックアップの3つの機能を統合したラインアップが「All-in-One Storage System(AiO)シリーズ」だ。iSCSIとNASを併用できるだけでなく、搭載されたMicrosoft Windows Storage Serverのさまざまな機能を活用することができる。「ボリュームシャドウコピーサービス(VSS)」によるスナップショット作成や、ファイル内容をチェックして同一内容のファイル実体を1つだけ保存する「シングルインスタンスストレージ(SIS)」などがその例だ。
また、サーバ内蔵ストレージに格納されたMicrosoft Exchange ServerやMicrosoft SQL Serverのデータを手軽に移行できるウィザードも用意されている。価格帯は約100万円からで、運用管理の手軽さを考えれば中小企業クラスにも十分訴求可能な製品となっている。
上位機種は2次キャッシュにSSDを搭載――サン・マイクロシステムズ
同社のストレージ戦略「Open Storage」に基づき、中堅・中小企業にも訴求可能な製品が「Sun Storage 7000シリーズ」だ。200万円弱〜650万円の価格帯で3モデルが用意されている。同社は「オープンスタンダード」戦略の元、サーバ、ネットワーク、OS、ミドルウェアといった情報システムのあらゆる構成要素のオープン化を推進している。「Open Storage」もその一環であり、「Sun Storage 7000シリーズ」にはサーバOSとして実績のある「Open Solaris」とファイルシステムとして実績のある「ZFS」が活用されている。「Open Solaris」の仮想化技術や「ZFS」が提供する異種ディスクが混在したストレージプール管理機能が存分に生かされている。
さらに上位2モデルには2次キャッシュとしてSSDが読み出し用と書き込み用にそれぞれ個別に搭載されており、高いI/Oパフォーマンスを発揮する構成となっている。同社はオープンな土台にパートナー各社が独自の機能を加えるなどして、ある種の「エコシステム」が形成されていくことを目指している。
今後、運用管理機能面がさらに強化したカスタム製品が登場すれば、情報システム部門の人員が少なく、運用管理が負担となりやすい中堅・中小企業にとってもプラスとなるだろう。
SAN導入済みの中堅企業向けストレージ仮想化製品を提供――日本IBM
中堅企業向けに「System Storage DS3000シリーズ」を提供している。SAS接続の「System Storage DS3200」、iSCSI対応の「System Storage DS3000」、FC-SAN対応の「System Storage DS3400」の3モデルからなり、価格は最小構成ではいずれも100万円を下回っている。
また、異機種のSANストレージを仮想化によって統合する「SANボリューム・コントローラー」の中堅企業向け廉価版である「SANボリューム・コントローラーエントリエディション」を800万円の価格で提供している。SANを早期に導入した中堅Hクラスが対象となる製品である。
以上、各ストレージベンダーの中堅・中小企業向け製品とその戦略について俯瞰してみた。これらを第一回で取り上げた中堅・中小企業の年商区分に重ね合わせると以下のようになる。
最終回となる次回はユーザー動向とベンダー動向を踏まえた、中堅・中小企業向けストレージ市場の展望について述べていく。
著者紹介:岩上 由高(いわかみ ゆたか)
ノークリサーチ シニアアナリスト。早稲田大学理工学部大学院数理科学専攻卒。ジャストシステム、ソニー・システム・デザイン、フィードパスなどを経て現職。豊富な知識と技術的な実績を生かし、各種リサーチ、執筆、コンサルティング業務に従事。
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