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クラウドコンピューティングの幻想から目覚めよ単純ではない企業ITの実情(2/4 ページ)

クラウドコンピューティングがあたかも時代の救世主であるように論じられている。過熱ぶりを見ながら、真っ先にわたしが思い出したのはNGNだ。3月19日に著書『クラウドコンピューティングの幻想』(技術評論社)を発売するエリック松永氏に話してもらう。

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クラウド時代の新サービスについて

 消費者向けのサービスに関しても、Googleというクラウド企業が次々と世に送り出す斬新なサービスが、あたかもクラウドコンピューティングという魔法の玉手箱から生み出されるように誤解される傾向が強い。クラウドコンピューティングの仕組みが斬新なサービスを登場させたわけではない。Googleという企業が優秀なエンジニアを高いモチベーションで雇い、彼らに斬新なサービスを発想させる自由な企業文化を持っている点に注目すべきである。サービスを支えるITの仕組みは最初に注目すべきポイントではない。

 プラットフォーム起点の発想(クラウドコンピューティングさえあればという洗脳)はIT企業のサービス提供者側のロジックであり、ユーザー側のことを何も考えていない。ユーザー側からすれば、クラウドコンピューティングは完全なサービス起点であり、どんなクラウドの仕組みで受けるのかは受益者側からすれば全く関係ない。

 Googleはそのサービス内容とパフォーマンスがすべてであり、クラウドの仕組みは縁の下の力持ちなのだ。サービス提供者側もサービスを生み出すプロセスをクラウドコンピューティングという一部ではなく全体から見ていかない限り、斬新なサービスが生まれる仕組みは分からないし、変な議論をしていると新しいサービスの誕生を阻害しかねない危険性もある。

クラウド時代に生まれた企業と古い企業

 ちなみにGoogleはインターネット時代の申し子のような企業だ。大学のキャンパスから優秀な学生の自由な発想から生まれた。資金のない学生がいきなりスーパーコンピュータを占有して開発に専念できるはずもなく、安いサーバやPCを使い最高のパフォーマンスを引き出しながらサービスを実現していった。

 Googleにとって仮想化技術が重要なのではなく、検索サービスがいかに高いパフォーマンスを発揮するかということが発想の起点になる。限りあるハードウェアをどう活用するか頭を使ってパフォーマンスを挙げることから始まっているのだ。新しい企業は、古いIT資産を持っていない。しかし、古い企業になれば既に投資してしまった多くの古いIT資産が存在する。ゼロベースで一掃できるならともかく、古いIT資産をどうしていくのかという答えは若い企業にはない。各企業が戦略として考えるべきで、クラウド時代に生まれた企業を教科書として信仰してしまうのは、間違った方向にいく可能性が高い。

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