コミュニケーションを促進する技術的な仕組み:オープンソースソフトウェアの育て方(2/2 ページ)
フリーソフトウェアプロジェクトを運営していくには、さまざまな情報を取捨選択する技術が必要です。本稿では、ソフトウェアを用いていかにプロジェクト内のコミュニケーションを円滑にするかを考えます。
プロジェクトに必要なもの
ほとんどのオープンソースプロジェクトは、情報管理用のツールとして少なくとも以下のようなものを用意しています。
- Webサイト
プロジェクトについての情報を、管理者側から一般に向けて公開する場所です。また、プロジェクトで使用するそのほかのツールについての管理用インタフェースもここで提供します。
- メーリングリスト
通常は、そのプロジェクトにおける最も活発な議論の場となります。また、議論の「記録媒体」としての意味合いもあります。
- バージョン管理システム
開発者が、コードの変更点を追いかけやすくするものです。変更内容を元に戻したり、ほかに移植したりもできます。これを見ると、コードに何が起こっているのかを誰もが知ることができます。
- バグ追跡システム
開発者が自分の作業内容を確認したり、ほかの開発者と作業を調整したり、リリース時期の予定を立てたりするために用います。特定のバグの状況や関連情報(再現手順など)について、誰もが調べられるようになります。バグだけに限らず、やるべき作業やリリース時期、新機能の追加などについてもここで扱うことがあります。
- リアルタイムチャット
ちょっとした議論や質問のやり取りを行う場です。議論の内容がアーカイブされないこともあります。
ここで挙げたツールはどれも異なるニーズを満たしますが、その機能には相関性があります。また、各種ツール群は協調して動作させなければなりません。これ以降では、その方法について考えます。また、より重要なこととして、メンバーにそれを使ってもらうにはどうすればいいのかも説明します。Webサイトについての議論は後回しにします。Webサイトは、独立したツールというよりはほかのツールを組み合わせるための接着剤のようなものだからです。
どんなツールを選択しようかといった問題に悩まされたくない場合は、でき合いのホスティングサイトを使用するといいでしょう。たいていはパッケージ化されたWebサイトのテンプレートが用意されており、フリーソフトウェアプロジェクトの運営に必要なツールもひととおりそろっているはずです。本章の後半のツールがひととおりそろったホスティングサイト項で、ホスティングサイトの利点と欠点を取り上げます。
著者:Fogel Karl
翻訳者:高木 正弘
翻訳者:Takaoka Yoshinari(a.k.a mumumu)
製作著作 © 2005, 2006, 2007, 2008, 2009 Karl Fogel, 高木正弘, Yoshinari Takaoka(a.k.a mumumu), under a CreativeCommons Attribution-ShareAlike (表示・継承) license (3.0, 2.1-jp)
よいフリーソフトウェアを作ることは本質的に価値のある目標です。その方法を模索している読者の皆さんが、本連載「オープンソースソフトウェアの育て方」で何かのヒントを得てくだされば幸いです。
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