「iPhone or Android?」――あなたの知らないモバイル業界の真実:賢者の意志決定(3/3 ページ)
iPhoneアプリをビジネスとしてとらえたときに、最も難しい話題の1つが、プロモーションです。本稿では、実体験に基づくiPhoneアプリのプロモーション手法を考察するとともに、モバイル業界は今後はiPhoneやAndroidとどのように向き合うべきか、そして、iPhoneとAndroidの最終戦争の行方について、前回に引き続き“鬼才”清水亮が解説します。
iPhoneとAndroid、最終戦争の行方は?
UEIはiPhoneが発表されて以来、その可能性のとりこになり、以来、端末が公開されるのが待ちきれずにマルチタッチのスクリーンを自作したり、端末が米国で発売されるといち早く入手し、SDKが公開される前からJailbreakという手法でアプリを開発したりするうちにiPhoneの魅力にぐいぐい引き込まれていきました。
そしてAppStoreの開始とほぼ同時にアプリを発売し、現在までに別ブランドを合わせて9本のアプリを開発し、現在も5本以上のアプリを開発中です。また、弊社の研究員である近藤誠が監訳した「iPhone SDK アプリケーション開発ガイド」がオライリーから発売されています。
対してAndroidに関してはというと、実はこちらもSDKが公式にリリースされる以前から研究を始めていたのですが、なかなかAndroid用のアプリ市場が立ち上がらないので、とりあえず弊社のAndroid開発の中心人物である布留川英一が解説書を書くにとどまっています。ただし、先日ようやく日本でもAndroid Marketに有料アプリを提供できるようになったので、今後は期待できそうです。
今のところ、Androidはその実力を十分に発揮できていない、という感じがしますが、設計思想としては素晴らしい点が幾つもあります。とりわけ複数のアプリが同時に実行される「マルチタスク」機能に関してはかなりの完成度です。
しかしハードウェアからOSまですべて独裁的にAppleが決定するiPhoneと違い、Googleが設計し、各ハードメーカーが独自に拡張するAndroidでは、初期に大きな成果を期待するのは難しいと言わざるを得ません。
とはいえ、長期的な視点に立てば、Androidはよりオープンであり自由であるため、ハードメーカーやキャリアもその個性を発揮しやすいといえます。
これからしばらくの間はAndroid陣営の主導権争いが続くため、iPhone側から見るとAndroidは自陣営で泥仕合をしているように見えると思います。けれども彼らは確実に進化し、最終的には勝利を収めるのではないか、そしてAppleもまたそうした未来を計算に入れているのではないか、と思います。
その過程で和式ケータイはまるごとAndroidの一部として取り込まれ、そのまま消化されていくという可能性は濃厚だと思います。
ようやく課金ができるようになったAndroid Marketですが、まだ課金するためにGoogle Checkoutへの登録が必要だったりしてあまり使い勝手が良くありません。iPhoneも、クレジットカード払いではなく電話料金から直接引き落とされるようにならないとこれ以上国内で有料アプリを売っていくのは厳しいのではないかと思います。
その辺りの仕掛けが出そろってくるまで、あと数年はかかりそうです。けれどももう世界は動き始めています。筆者は10年前にiモードに出会ったときのような興奮をいま、この2つの新しいケータイに感じているのです。
10年後、人々はどのような形のケータイを使いこなしているのでしょうか。
著者プロフィール:清水亮
ユビキタスエンターテインメント代表取締役社長兼CEO。電気通信大学在学中に米Microsoftの次世代ゲーム機向けOSの開発に関わり、1998年末にドワンゴ入社。1999年に同社で携帯電話事業を立ち上げる。2002年に退社し、米DWANGO North America Inc.のコンテント開発担当副社長を経て2003年に独立。2005年、IPAの天才プログラマー/スーパークリエイターとして認定される。幼少時からプログラミングに親しみ、PC-9801FでBASICやアセンブラを習得。ブログは「Keep Crazy;shi3zの日記」。
ベストな意思決定を行うために必要なのは、世の中の潮流をしっかりと見極めることである。評論家が決して口にすることがない現実をその道の第一人者が語る「賢者の意志決定」はこちら。
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