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変化する情報システムのパラダイム戦略コンサルタントの視点(2/3 ページ)

ERP導入という「お作法」の変化を経て、企業はこの15年間にさまざまな経験を積んできた。今後、企業はITをどのような考え方で活用していくのか。戦略コンサルティングファーム独ローランド・ベルガーに寄稿してもらう。

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「グローバルスタンダード」と「ITによる競争優位」への疑問

 さて、ERPをベースに情報システムを作るとなると、時には100億円を超えることにもなり、通常の費用対効果の計算では正当化できません。それで、1997、1998年に流行したキャッチコピーが「グローバルスタンダード」です。「A社のERPを基盤に競争優位を創出することこそが、勝ち組企業のグローバルスタンダードです」というようなことを、ベンダーの営業担当者もコンサルタントも、さらには情報投資を経営層に承認してもらいたい情報システム部門まで口にしていたものでした。

 ERPをはじめとした旺盛なIT投資が、企業のITインフラの底上げに貢献したのは間違いありません。しかし、実際に競争優位を創出できたかというと疑問があります。「ITによる競争優位の創出は難しい」という認識を企業側が持っていると感じます。「グローバルスタンダードで競争優位性を獲得するべき」という喧伝が行き過ぎたことで、かえって企業の経営層が冷めた視点を持つようになってしまったわけです。

 この15年の企業の情報システムの変化を、不可欠さ、出来合い、競争優位でここまで述べてきました。三題噺ではありませんが、これらの変化が、企業の情報システムへの認識をどう変えるのかを考えてみます。この変化をベースに、新しいパラダイムがつくられ、定着していくことになるでしょう。

競争劣位の阻止が大事

 先にも述べたようにITは日常のビジネスを回すのに不可欠になっています。

 ただし、不可欠であることと、競争優位が創出できることとは別の次元の話です。例えば、電話はビジネスインフラとして不可欠ですが、電話があっても競争優位は創出できないでしょう。ITをビジネス運営のためのインフラとして位置づけ、どのように使っていくかを考える――多くの企業がIT活用の「原点」に意識を戻しています。そこから一段考えを進め、ITで大事なのは「競争劣位の阻止」との認識も急速に広まりつつあります。実は、この15年で企業が得た最大の教訓はこれなのです。

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