ERPとCRM市場はどちらがホットか――矢野経済研究所調べ
矢野経済研究所がまとめたERPおよびCRM市場に関する調査結果によると、ERP市場は投資が抑制されているが、CRM市場は数少ない成長分野となっている。
矢野経済研究所は3月2日、ERPおよびCRM市場に関する調査結果を発表した。
エンタープライズアプリケーション市場の中核を成すERPとCRMだが、その市場動向は大きく異なる。
IFRS特需に期待したいERP市場
成長が鈍化しているのが、ERP市場。矢野経済研究所は2009年のERPパッケージライセンス市場を前年比14.0%減の1005億円と推計。同社は以前、2010年には1440億円に達すると予測していただけに、この市場規模は残念な結果である。同市場がマイナスに転じるのは5年ぶりだが、下落率は10%を超えており、大規模投資を伴うERP案件は延期や見送りの対象となっている様子がうかがえる。
業種別では、自動車、電子・電子機器、機械など加工組立製造業の大手で特に投資が抑制されており、事業規模別では、これまでERP導入に積極的だった中堅中小企業で投資余力を失う企業が増加したという。
ERP市場は2010年もこの傾向が続くと見られ、前年比4.1%減の963億円と1000億円を割る見込み。IFRS(国際財務報告基準)への対応やオンデマンド型(SaaS型)ERPの登場などがポジティブな要因として同市場の成長に寄与すると考えられるが、成長要因として具体化するのは2011年以降になるとみられる。
オンデマンド型CRMが好調のCRM市場
一方、ERPに比べると市場規模はまだ小さいが、CRM市場は数少ない成長分野となっている。同社の調べでは、2009年のCRMパッケージライセンス市場は、前年比4.1%増の173億円と推計された。
この市場を牽引するのがオンデマンド型のCRMベンダー。2009年はオンデマンド型が前年比9.3%増、オンプレミス型(自主運用型)が0.2%増と、オンデマンド型CRMの人気が高く、CRM市場では、既にSaaSの利用が定着したといえる段階に入ったといえる。特にsalesforce.comは2009年に初めてCRM市場全体でトップシェアとなった。同社は2010年もシェア1位を維持する見通し。
CRM市場に占めるオンデマンド型CRMの構成比率は、2010年にオンプレミス型を超えるとみられている。ただし、オンプレミス型もカスタマイズの柔軟性、既存システムや周辺システムとの連携の容易さ、大規模かつ長期間利用する際のコストメリットなどで住み分けが図られるとされている。
CRM市場は、2010年に184億円にまで拡大するとみられており、2012年には207億円に達すると矢野経済研究所は予測している。
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