第3回 震災におけるメンタルヘルスとボランティア:東北地方太平洋沖地震からの復興 ── リスク管理、危機管理、そして復旧(2/3 ページ)
東北地方太平洋沖地震の危機に直面し、これから事業継続・復旧対応を進める企業の一助になればとITmedia エンタープライズ編集部では危機管理の専門家に連載をお願いした。今回は、震災時に必要となる心のケアとボランティアのあり方をまとめた。
もちろん望ましいのは、臨床心理士や精神科・心療内科の医師が被災地を回ることだが、現実的には難しい。そのような際は、ボランティアの力が役立つだろう。ボランティアが声を掛け、耳を傾けるだけでも被災者の心は満たされる。恐怖から心を閉ざし、自分の感情を表に発散できなくなっている方々もいる。そのような際、聞き役に徹して「だれかにこの思いを打ち明けたい」という思いに応えることも心のケアになる。救援物資だけでなく、ボランティアには、たくましく明るい笑顔も運んでもらいたい。
被災地の域外からも駆けつけてくれる、という安心感。だれかがそばに寄り添ってくれるという心強さ。手を取って「そうね、怖かったね」と無条件で受け入れてくれる安らぎ。それらが、被災された方々の「心の復興」の礎となる。
なお、JICAでは、海外での「心の復興」をストーリーでまとめたものを紹介している。
ボランティア希望者に5つの問い
ただ、ボランティアについては、気をつけるべきことがある。阪神・淡路大震災に駆けつけてくれたボランティアの中には、宿泊するホテルの手配を要求した者もいた。残念ながら本当の話だ。そもそも、被災地で安心して休息できる場所があれば、被災者が真っ先に収容される。被災地では、そのような場所の確保ができず困っているのだ。出張感覚や偽善の手助け感覚は通用しない。
また、善意・親切心を押しつけるようなボランティアは、かえって迷惑になる。被災地の危機管理担当者は、あちこちからバラバラと駆けつけるボランティアの整理だけでも大変な労力が必要になる。ボランティアに参加することがいけないのではない。ボランティアに向かう場合は、いま一度、次の5つの問いを胸に手を当てて自省した上で被災地に向かってほしい。
- 「ボランティアに行ってやる」と思う心はないか?
- 自分の衣食住は、自分自身で自立的に確保して参加できるか?
- ボランティアに行って大ケガをしても自己責任として納得できるか?
- 表彰状や栄誉が与えられなくても行きたいと思えるか?
- 被災地で窮状を訴える厳しい声を優しく包み込む心の広さがあるか?
この時期の東北地方はまだ寒さが厳しく、夜には零下になる日がある。風雨を避ける場所や簡易テントなども、自己完結で準備しなければならない。
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