ニュージーランド法務省はいかに罰金回収率を上げたか:G-Force Sydney 2012 report
これまで年間の罰金総額6億2700万ドルのうち2億2000万ドルしか回収できていなかったニュージーランド法務省は業務改革に乗り出した。
現地時間の8月23日、オーストラリア・シドニーで米Genesysが開催中の年次カンファレンス「G-Force Sydney 2012」は2日目を迎えた。キーノートでは、同社の各種ソリューションを活用して業務改革などを実現したユーザー事例が紹介された。
ニュージーランドの法務省では、スピード違反や駐車違反などの罰金回収業務において「intelligent Workload Distribution(iWD)」を導入し業務改善を図った。iWDとは、コンタクトセンターとバックオフィス部門におけるカスタマーサービスのタスクを統合管理し、リアルタイムで稼働状況を把握するソリューション。これを活用することで、地域やスキルなどに応じて最適なエージェントに業務を割り振り、回収率を向上することに成功した。法務省のCollections部門でゼネラルマネジャーを務めるBryre Patchell氏は「人員の数を増やすことなく、罰金の回収業務を効率的に行えるようになった」と胸を張る。
これまで法務省では、違反者から罰金を回収する際に、スタッフが各地域の保安官に逮捕状を渡し、保安官が回収作業を行っていた。例えば、スピード違反をした場合、違反者には罰金の支払い通知が来る。期限の30日以内に支払われない場合、全国26カ所にある回収センターにその情報が届き、担当者を決めていた。しかしながら、ルールは統一されておらず、運用の可視化がなされていなかった。マネジャーも現場を把握していなかったため、回収指示の優先順位がバラバラだった。担当者は取りたてやすいところから順に訪問するので、何カ月も支払いを延滞していた違反者も少なくなかったという。「年間120万件の罰金回収業務が発生し、その額は6億2700万ドルに上る。ところが、2億2000万ドルしか回収できていない状況だった」とPatchell氏は振り返る。
そうした中、もっと業務を改善してほしいという要望が各所からあり、法務省ではシステムを活用した回収業務の効率化を検討することとなった。ただし、予算は4000万ドルと限られていたので、システム導入による効果として、回収率を75%から90%に高めること、2000万ドルの収益増、オペレーティングコストの大幅削減などを目標に掲げた。
システム導入にあたり、業務全体のワークロードの可視化や、必要な機能の洗い出しなど、いくつかの課題を精査していった。加えて、ビジネスの現場で広く活用されているソリューションを求めた。「何十年も地下で眠るフランケンシュタインのようなレガシーシステムでは困る」とPatchell氏は話す。
いくつかのソリューションを検討した結果、GenesysのiWDを採用した。その理由として、モニタリングやレポートの機能が充実していることや、さまざまな拠点のシステムを一元管理できることなどを挙げる。Patchell氏は「駐車違反の罰金が1度なら回収の優先順位が下になり、複数回なら優先順位が上がりエージェントにプッシュ通知される仕組みを望んでいた」と説明する。
iWDの活用によって、マネジャーの意思決定がより適切にできるようになったほか、人材の稼働率を上げることにつながったという。ただし、「システムを導入すれば業務を改善できるというわけではない。必ず人間の手が必要であるということをリーダーは肝に銘じてほしい」とPatchell氏は強調した。
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