【第2回】タレントマネジメントシステムの構築:一から学ぶタレントマネジメント戦略(3/3 ページ)
今回は、どうやってタレントマネジメントシステムを作ればいいのか、それに対する考え方や心構えをお伝えします。
グローバル視点を持ったタレントマネジメントを
このように見てくると、人事管理システムとタレントマネジメントシステムを一体化し、情報は1カ所で管理するほうが望ましいと言えます。ただし、評価についてはワークフロー・エンジンを使った自社システム、教育研修に関してはeラーニングを含むLMS(ラーニング・マネジメント・システム)パッケージ、人事マスター管理については人事給与パッケージといったように、業務ごとに既に異なる製品、異なるアーキテクチャでシステム化している企業が多いのではないでしょうか。これらを一気に捨て、新しいものに統合することは容易ではありません。
一方で、タレントマネジメントのシステム化を急いでほしいというニーズもあります。だからこそ、人事情報管理システム全体の目指す姿を描き、そこに至る工程を明らかにすることが重要です。
タレントマネジメントには、構築に比較的時間のかからないクラウドサービスという選択肢も増えてきています。クラウドは機能や期間を限定し、必要な機能を必要な時だけ契約して使うことが可能なサービスですので、当初はそれを利用して運用を始め、ノウハウを蓄積した上でタレントマネジメントを含めた次世代の人事情報管理システム構築のステージに進むというアプローチも考えられます。また、クラウドで人材管理すべてを運用するということも今後は十分にあり得ます。
最後に、企業はグローバルでのタレントマネジメントをどう実現するかについても考えなければいけません。これまで日本企業の多くは、図3の左側に見られるように、個別の人事システムからの情報だけを本社のデータベースに集める形態をとっています。これに対し、欧米企業は図3右側のように、給与計算や勤務管理など国ごとに法制、税制の違いがあるため、分散した方が効率的なものは統一せず、評価や採用、異動、育成などタレントマネジメント機能については統一するという明確な区分けをしています。
システムを統一するということは、評価などの業務プロセスも合わせることなので、それにより標準化された信頼性の高い情報が自動的に集まるようになります。こうした仕組みを構築するには、各国のリーダー、社員を納得させる人事ビジョンとそれを浸透させるコミュニケーションが必要となります。道のりは平坦ではありませんが、グローバル人材の活用をうたうのであれば検討に値するでしょう。
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