ネットワークをF1のレース戦略に活用するメルセデスAMG:Computer Weekly
インドの通信企業Tata Communicationsは、Mercedes AMGの本社にネットワークを介してデータを送り、世界各地で開催されるレースでのパフォーマンス向上に貢献している。
フォーミュラ1(F1)は、世界中で6億人が観戦する、手に汗握るモータースポーツだ。現在、11チーム、22人のドライバーが19のサーキットで熱戦を繰り広げているが、50周年を目前にしてその勢いは衰えず、2014年はさらにレース数が増える予定だ。
しかしF1は、今やレースクイーンとシャンパンとスピードだけのスポーツではなくなった。舞台裏では、テクノロジーがますます重要な役割を果たすようになっている。
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F1にはCSCなどのサービスプロバイダーからDellなどのインフラ企業まで、IT業界の超有名企業が多数携わっている。しかし、最近提携先となったのは、インドの通信プロバイダー、Tata Communicationsだ。2012年2月、TataはF1の公式接続プロバイダーになる契約を締結した。この契約では、Webホスティングやコンテンツデリバリーネットワークも提供する。F1のチーフテクニカルコンサルタントを務めるエディー・ベーカー氏は、「われわれが必要とするサービスを提供できるプロバイダーを探していた。調べた中で、われわれが望む内容を提案したのはTata Communicationsだった」と語る。
「ただし、Tataが実際にサービスを提供できるかどうかは分からなかった。それを判断するには、F1の1シーズンを通して試してみるしかなかった。世界各地を移動し、20箇所のサーキットをシームレスにつなぎ、FormulaOne.comを世界中の数百万のファンに届けられるかどうかを評価した」
「(結果は)どのレースでも、非常にスピーディに必要なサービスが提供された。全てのサーキットで一貫して品質の高いIT接続を確保するにはロジスティクスが大きな課題だったが、Tata Communicationsは見事にそれをクリアした」
「われわれが求める時間内でそれをこなすために、多大な努力が払われた。これで、F1の開催地がどこになっても、同じ信頼性とパフォーマンスを期待できるようになった」
特定のチームをサポート
F1との全体的な提携は順調だったが、Tata Communicationsはさらに踏み込んで、特定のチームとの提携獲得を模索。2013年4月にMercedes AMG Petronas(以下、「メルセデスAMG」)と新たにマネージド接続を提供する契約を結んだ。
Tata CommunicationsのF1事業担当マネージングディレクター、メユール・カパディア氏は、「F1での実績と、世界中でサービスを提供できる基盤を築いたことで、特定のF1参加チームにサービスを提供することを考えるのは自然な流れだった。その相手としてメルセデスAMG以上のチームはいない」と語る。
「メルセデスAMGはイノベーションの最先端にいて、この1年の取り組みはパフォーマンスの劇的な変化として現れている。弊社はメルセデスAMGのマネージドネットワークサプライヤーになれたことをうれしく思っている。この契約により、弊社はパートナーとしてレーシングカーのタイムアップに役立つ新たな手段を考案する上で、非常に有利なポジションに着くことができた」
メルセデスAMGの本社は、イギリスGPが開催されるシルバーストーンから目と鼻の先のノーサンプトンシャー州のブラックリーにある。本社では、例えば次のレースまで1週間という厳しい時間的制約がある中でも、チームの2台のマシン(ドライバーはルイス・ハミルトンとニコ・ロズベルグ)の準備を万全に整えるべく、数百人のスタッフが労力を惜しまず整備に当たっている。
膨大なネットワークにアクセス
Tata Communicationsとの提携により、メルセデスAMGの本社は開催地がシルバーストーンであれ地球の反対側であれ、レース当日になくてはならない役割を果たせるようになった。
50万キロの海中ケーブルと20万キロの陸上ネットワークファイバーを擁するTata Communicationsの広範なネットワークにメルセデスAMGのサイトをリンクすることで、ピットから本社にリアルタイムでデータを送っている。このデータを基に、エンジニアは新たにマシンをスピードアップさせる方法や、ドライバーとマシンから最高のタイムを引き出すために徹底的に微調整や改善を行う方法を編み出した。その結果、たとえ数千マイル離れたところにいても、事実上、マシンの調整に携わるスタッフの数は2倍になっている。メルセデスAMGの(マシンとガレージの全電子装置を担当する)トラックサイドエレクトロニクス責任者であるエバン・ショート氏は、レースシーズン中の日曜の午後の、活気にあふれた本社の様子を次のように話す。
「週末は、ここは活動拠点になる。最大24人がスタンバイし、インターコム、ビデオフィード、データストリームに接続し、できる限りサーキットにいる場合と同じ成果を出せるようにしている」
「マシンの調整とデータ解析にできるだけ多くのスタッフを当てたいが、全てのレースにスタッフ全員を連れて行くことはできない。そこで、デリーやアブダビにスタッフを派遣する代わりに、ここ(本社)で作業してもらっている」
「マシンデータのライブストリームに接続し、サーキットで見ているデータと同じデータを本社でも見られるようにしている。また、インターコムのストリームに接続し、ドライバーやクルーの声、彼らが交わす戦略についての会話など、9つの音声ストリームを聞いている。レース中はこれらのストリームを大いに活用している」
ビデオストリームに関しては、F1では自チームのビデオストリームを見ることは禁止されているので、世界中の放送局が流す映像を使わなくてはならない。ショート氏の話では、本社にいるスタッフの方がサーキットにいるスタッフ以上に洞察が得られているという。
「本社のスタッフは恐らく現場以上にビデオストリームを見ている。サーキットではその瞬間に起きていることに気を取られるからだ。本社では、世界中の放送局が流す高精細ビデオストリームをかき集め、他のマシンの状況についての情報を拾い上げて、それを現場に提供している」
「戦う観点では、このように幅広い情報にアクセスできることが極めて重要だ」
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