数百億件のデータを30秒で解析――クラウド型DWH「Treasure Data」に新サービス
Hadoopベースのクラウド型DWHサービス「Treasure Data Service」に、数百億件のデータを30秒程度で分析できるというオプションサービスが追加された。
クラウド型のデータウェアハウス(DWH)サービス「Treasure Data Service」を手掛けるトレジャーデータは12月9日、クエリの実行速度を従来比で10〜50倍に高速化するというオプションサービス「Treasure Query Accelerator」の提供を始めた。
Treasure Data Serviceは、ユーザー企業が持つ大量のセンサーデータや購買取り引きデータ、Web閲覧データ、アプリケーションログデータなどをクラウド上に蓄積し、分析可能な形に整理して提供するサービス。有償版は月額3000ドルからのサブスクリプション制で利用でき、ビッグデータ活用基盤の構築・運用にかかる時間やコストを低減するとしている。
新サービスは、アドホックデータ解析向けに新たに構築したクエリエンジンを提供し、従来のバッチ型エンジンと比べてクエリ実行速度を高速化するもの。太田一樹CTOによれば、同サービスを先行導入したある小売企業は「過去数年かけて保存した数百億件にわたるデータを、わずか30秒ほどでバスケット分析できるようになった」という。
新サービスと並行して、従来のバッチ型クエリエンジンも引き続き提供する。定時レポーティングのように「多少時間がかかっても正確性が求められる処理」はバッチ型、各種リアルタイム集計などの即時性が求められる処理にはアドホック型――といったように、用途に合わせたクエリエンジンの使い分けも可能だとしている。
同社はこれに併せ、Treasure Data Serviceに保存したデータをグラフ化して閲覧できるデータ可視化ツール「Treasure Viewer」の提供も始めた。同ツールの利用で、SQLなどの知識を持たない人でもドラッグ&ドロップ操作だけで簡易的なグラフを作成できるという。
ユーザー企業は同ツールを無料で利用できる。ただし「Treasure Viewerはあくまでシンプルなデータ可視化機能のみを提供する。より高度な機能を必要とするユーザーは、これまで通り他社のBIツールと組み合わせて使っていただくことになるだろう」と太田CTOは話す。
新サービスの提供に合わせて、サービス提供プランも一新。従来のスタンダード版(月額3000ドル)とカスタム版(個別見積もり)に加え、月額7500ドルの「プレミアム版」を新設。プレミアム版では前述のTreasure Query Acceleratorを利用できるほか、処理できるレコード数やバッチクエリのコア数増加、同社専任スタッフによるサポートを受けられるなどのメリットがある。
グリーや良品計画もユーザーに
トレジャーデータの米国法人であるTreasure Dataは、芳川CEOをはじめとする日本人3人が2011年に米カリフォルニアで立ち上げたベンチャー企業。米Yahoo!の共同創業者であるジェリー・ヤン氏などが出資しており、グローバルでは米salesforce.comなど約100社がTreasure Data Serviceを採用している。
Treasure Data Serviceは2011年10月のサービス開始以来、「保存されるデータ量が指数関数的に増えている」と太田CTOは話す。14年1月にデータ保存量が3兆件を突破したほか、今では秒間15万件のレコードが新たに登録されているという。「われわれ自身も驚くほどのペースだ」(太田CTO)
グローバルでの顧客数は今年5月時点で約70社だったが、今では100社以上に増加。国内ではクックパッドや博報堂に加え、グリーや良品計画などが新たにTreasure Data Serviceを採用したという。
利用企業の増加に伴い、「業界ごとにやりたいことが似ていることが分かってきた」と太田CTOは話す。そこで今回、各業界のニーズに沿って初期セットアップを支援する「ソリューションテンプレート」を用意。企業は同テンプレートの利用で「デジタル広告レポート&解析」「オンラインゲーム行動解析」「マーケティングブランド解析」といった目的に沿った設定済み解析ダッシュボードを簡単に利用できるという。
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