年間60万件の「顧客の声」を自動分析――フコク生命が挑む“ビッグデータ苦情対応”(3/3 ページ)
フコク生命は、顧客から寄せられる年間約60万件もの問い合わせ内容を自動分析するシステムを構築したという。その背景や狙いを聞いた。
苦情の原因をドリルダウン分析 「現場の動き方が変わった」
「実は、今回のシステムを導入する前から簡易的なテキストマイニングツールは導入していたんです」と齋藤さんは振り返る。しかし、従来のツールはキーワードに基づく検索機能しか持たず、以下のような課題を抱えていたという。
「旧システムでは検索できる問い合わせ件数が少なかったり処理速度が遅かったりと、実用に耐えられませんでした。また、検索したキーワードの単語数しか表示されず、新しい発見や気付きを得られない状況でした」(齋藤さん)
今回の新システムでは、起こった事象に対して原因分析を行える簡易分析機能を用意。例えば、苦情が増えた際に現場スタッフがその原因を掘り下げて分析し、傾向などを把握できるようになったという。
今後は音声分析を導入 苦情を「37分類」に自動仕分けする機能も
同社は今後、テキストマイニングツールの活用だけにとどまらず、コールセンターでの電話応対をリアルタイムで音声認識するシステムの導入を検討しているという。
「これは問い合わせ内容の入力から苦情抽出までを簡素化するだけでなく、コールセンターの対応力アップにつながります。音声認識システムを導入すれば、オペレーターの応対内容をスーパーバイザー(※)がPC画面でリアルタイムで把握できると考えています」
※スーパーバイザー:コールセンターでオペレーターの業務内容を監督する担当者のこと
また、テキストマイニングシステム自体のさらなる高度化も図っていく方針だ。生命保険業界では、顧客から寄せられた苦情を37分類に仕分けして業界団体に報告する義務があるが、この分類作業もテキストマイニングによって自動化していきたいという。
「今回のシステム導入を通じ、データ分析でどのようなことができるかが分かりました。この取り組みを見て、社内の他の部門でも『こういうことがしたい』といった新たな声も生まれています」と齋藤さん。フコク生命は今後も、1つでも多くの“顧客の声”と向き合うための挑戦を続けていく考えだ。
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