トヨタ流米作りで“ニッポン農業”を強く、元気に:“カイゼン”と“ビッグデータ”を稲作へ(3/4 ページ)
トヨタ自動車が新境地に挑む。農業分野にカイゼン活動を持ち込むとともに、クラウドとビッグデータを駆使した稲作支援サービスを開発。早くも劇的な成果が出ているという。
作業ミスがゼロに!
豊作計画とは、圃場(ほじょう)データベースと作業データベースから成るクラウドサービス。納期スケジュールなどの情報を事前に登録すると、それぞれの水田に対して日ごとの作業計画が自動で生成される。
米生産農業法人の社長などの管理者ユーザーが計画に基づいて作業指示を出すと、現場の作業者が持つスマートフォン(タブレット端末も可)へその日に作業すべき水田や必要な作業時間などの情報が届く。作業者はGPSで作業するエリアを確認し、現場で作業の開始、終了時にスマートフォンのボタンを押す。すると、作業データベースに情報が反映され、農作業の進ちょく管理が可能になるほか、そのデータを使って作業日報や依頼先への実績レポートも容易に作成できる。
サービス開発する上でも鍋八農産と協力し、その都度、現場でテスト作業などを繰り返しながらサービスの品質向上や機能追加などを図っていった。喜多氏が特にこだわったのは「現場で使ってもらえるサービス」にすることだ。
「作業者は忙しい。あまりにもスマートフォンへの入力項目が多ければ、紙に書いた方が早いという話になる。従って、現場ではスタート、ストップのボタンを押すだけのシンプルな仕様にして、その裏側で走るシステムの仕掛けを工夫した。UI(ユーザーインタフェース)も単純にした」(喜多氏)
では、豊作計画によって具体的にどのような効果が出たのか。1つには、GPS機能による作業エリアの確認と、一日に作業すべき水田数全体と進ちょくがリアルタイムで把握できるようになったので、作業する水田を間違えたり、作業そのものを忘れたりすることがなくなった。以前は頻発していたそうしたミスが、2013年にはゼロになったという。
もう1つは、日報など事務仕事の効率化だ。今まで作業者は現場作業が終わり、事務所に戻ってから手書きで日報を作成していた。それが現場にいながらスマートフォンで作成できるようになった。しかもスタート、ストップのボタンを押すだけなので、大幅な時間短縮となった。経理担当者もそこで生成されたデータをまとめて依頼主にメール送信するだけで済むようになった。以前は手書きの日報情報を個別にエクセルに打ち込んでいたのである。
2013年の実績を見ると、豊作計画の活用によって鍋八農産では前年比で労務費が5%削減、育苗のための設備などにかかる資材費が25%削減したことに加え、経営管理レベルの向上、作業者の改善意欲向上、依頼主からの信頼獲得と、目に見える成果が表れた。
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