「ロマンスカーVSE」を見る目も変わる? 小田急×タブレットのよい関係(2/2 ページ)
新宿−箱根を結ぶ小田急ロマンスカーをはじめ、関東近県の観光地や都市を結ぶ小田急電鉄。最近、駅係員の手にタブレットがあるのを見かける。この新たに導入したWindows タブレット+Office 365+Intuneの組み合わせは、顧客満足度の向上にどんな役割を果たすのだろうか。
対策と方法:タブレット常備+Office 365で、プラスαの情報共有基盤を構築
この課題は「無線接続が可能なタブレットを採用」し、駅係員だけでひとまず多くを解決できる。導入パートナーであるセカンドファクトリーの提案を軸に、端末には無線接続と携帯性に優れるWindowsタブレットを、情報活用の基盤にOffice 365、モバイル機器のデバイス+セキュリティ管理にMicrosoft Intuneが適すると判断した。
小田急電鉄は2013年夏にタブレット導入の検討を開始。最初のきっかけはTIDの情報をタブレットへ配信し、モバイル時も確認できる「WebTID」システムがあることだった。Windowsタブレット+Office 365の組み合わせについては、
- 既存の業務システムと親和性があった
- 操作性のよさ
- 信頼性
をポイントに採用を決めた。
鉄道という市民のライフラインとしてサービスを止めることが許されない(ミッションクリティカルな)サービスであること、すでに稼働するWindowsベースの業務アプリケーションも生かすこと背景に、エンタープライズ製品で長年の実績があるWindowsプラットフォームでの構築が適していたようだ。
具体的には、Active Directoryのドメインに参加することで、既存システムと同様のユーザー認証が可能だったこと、Office 365とIntuneの組み合わせでモバイルデバイスの管理やマルウェア対策も統合し、集中的に行えることなどが、信頼性とセキュリティを確保する上で重要なポイントになったという。
効果と成果:問題対応の迅速化が可能に、さらなる顧客満足度の向上へ
採用決定後、まずはWebTIDの有効性を試行。想定通り、「駅係員がその場でTIDの情報を視認できる」方法は、確実性、利便性ともに有効だった。続いてOffice 365のSharePoint Onlineを使い、タブレットで撮影した現場写真や状況を迅速に報告できる機能を2014年1月に実装した。これまで「デジタルカメラとボイスレコーダー、報告用紙を持参して現場調査を行い、その情報を駅事務所に持ち帰ってから運輸司令所や本社に伝達」していた作業は、通信機能も入力機能も録音機能も、そしてカメラも搭載するタブレット1台で済ませられることから、その場で現場の状況を即座に伝達できるようになった。
これらの機能は、作業員や駅係員の効率を高めるとともに、なにより現場の状況が伝達される時間が大きく短縮される。具体的に迅速に伝達できる手段はすぐさま明確な効果として表れ、利用者のほとんどがメリットとして感じられるようになったという。
テスト期間を経て、2014年1月中旬より11駅にタブレットを配備。事故対応の訓練で活用しながら運用方法を熟成させ、アプリケーションを改善していった。2014年5月には全駅での配備が完了した。
今後、チャットや動画を使うリアルタイムなコミュニケーション手段の提供を取り入れるべく、Lync Onlineの本格運用も考察。数年後には全社展開する計画だ。Link OnlineのWeb会議システムは、東日本大震災のような広域災害が発生した場合の対策などにも効果が見込めるためという。
「以前は、運輸司令所からの情報を携帯電話での音声情報を聞いて対応していました。それがタブレットになると、情報をすぐ目視でき、その他の必要な情報にもその場でアクセスできます。つまり、お客様に的確な情報をより正しくお伝えできるようになりました。直感的に操作できるタブレットのかんたんな操作性は、混雑し、慌ただしい状況で使用するにも効果があります」(小田急電鉄 小田原管区総括主任兼信号扱者の藤田修一氏/出典:マイクロソフトWebサイト)
また、デジタルデータとして集約する情報は「まとめ」「管理」もしやすい。あとで内容を再確認する作業の効率も高められる。言葉だけではうまく伝わらないこともあった現場の状況は、写真も併用すると一目瞭然に伝えられるようになる。こんなメリットも、今後の顧客満足度の向上に大きく寄与しそうだ。
「どのくらい待てば運転再開するの?── これまで、そのご回答を現場担当者だけで判断するのは困難でした。ただ、その場で運輸司令所や本社の専門スタッフも参加すれば、的確かつ迅速に判断できます。音声情報のみではうまく伝えにくかったことも含め、タブレットならそれがすぐできます。運輸司令所などに問い合わせが集中することもなくなるため、運転再開に向けた作業に集中しやすくなるメリットも大きい。なにより、今後の見通しをお客様へ、正確に、迅速に伝えやすくなります」(小田急電鉄の藤田氏/出典:マイクロソフトWebサイト)。「まだ使い始めたばかりですが、タブレットとクラウド サービスの組み合わせには、大きな可能性があると感じています。今後、これらを活用して、もっとお客様の驚きや喜びを提供する、きめ細かい新たなサービスも生み出せるはずです」(小田急電鉄経営政策本部IT推進部部長の後藤真哉氏/出典:マイクロソフトWebサイト)
関連記事
- 持続型成長経営に向けてビッグデータ活用に挑む小田急
沿線人口がピークを迎えつつあると予想する小田急グループ。少子化や人口減などによる経営環境の変化に立ち向かうべく、ビッグデータ活用に向けた経営情報システムを構築している。 - 買い物直後にクーポン配信、JCBがクレジットカードで「O2Oビジネス」を始めたワケ
クレジットカード業界に転機が訪れている。カード払いに対応する店舗が一般的になってきた今、カード各社がサービスで差別化を図る方針に切り替えつつあるのだ。国内大手のジェーシービーが今秋、決済システムとビッグデータを連携させたクーポン配信サービスを始めた。その狙いはどこにあるのか。 - ヱヴァ高速バス2号機「第3新東京市」行き、4月28日運行開始
箱根観光のさらなる訴求を見込む「ヱヴァバス2号機」が運行される。小田急箱根高速バスが4月28日より運行。 - 駅ホームの空調に地中熱を利用、年間のコストを30%削減
小田急電鉄は東京都内の2つの地下駅に、地中熱を利用した空調システムを導入した。駅の直下の床に熱交換器を設置して、ホームの空調に利用する。1年を通して温度が変動しない地中熱を利用することで空調の効率を高めることができ、年間のランニングコストを30%削減できる見込みだ。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.