eラーニング受講率「90%超」 セイコーエプソンが「新・人材管理システム」に込める期待:新たなビジネス領域への挑戦に必要な“人事施策”を支援(2/2 ページ)
ビジネスモデルの転換と新規事業領域の市場開拓を──。セイコーエプソンは、今後のさらなるビジネス成長を担う策の1つに「経営資源としての人財をどう生かすか」を掲げる。社員スキルを含む人事情報と教育研修基盤の一元化を目的に導入したITシステムとは何か。
対策と方法:人事情報と社員教育情報を一元化
まず必要としたのは、保有する公的資格などの人事情報だけでなく、eラーニングの受講や集合研修の募集、履歴管理に至る社員教育全般の情報の一元管理だった。
セイコーエプソン人事本部人事部主事の杉田啓子氏は「各事業部でそれぞれ取得しているISO 9000やISO 14000では、教育訓練を定期的に実施したうえでその記録を保持していくことが要求されます。この情報はこれまで事業部や関係会社ごとに個別のシステムで管理されており、グループ全体での実施情報を把握するのに時間がかかっていました」(出典:東芝ソリューションWebサイト)と話す。職場の上司が部下の受講履歴や保有する資格、情報を確認でき、社員自身が教育研修計画を確認できる情報の一元化と可視化が要件になった。また、日本国内の2万人超の従業員が快適に利用できるインフラも求められた。
ERPベンダーを含めて複数の製品を検討する中で選ばれた東芝ソリューションの「Generalist」は、社員数20万人を超える東芝グループ全体の人事情報の管理にすでに活用されている実績がある。この実績に加えて「等級別に目指す姿を設定した“スキルズインベントリ”と呼ぶ独自の仕組みを社内で構築しています。この自社独自の管理項目をGeneralistでも同じように設定できた点がよかった」(セイコーエプソンの杉田氏/同上)とし、人事業務に精通した東芝ソリューション担当者による業務フローの整理についてのバックアップ体制とともに選定の決め手となった。
効果と成果:eラーニング受講率「90%超」に
導入後、以下の効果が出た。
- 既存資料から簡単に変換してコンテンツを作る基盤ができたため、教材を1〜2日程度で制作が可能になった
- 未受講者の抽出が容易に実施でき、教育の主管部門自ら個別にメールを送付するなど受講を促すようアプローチしやすくなったため、90%を超えるまで受講率が改善
- 教育の主管部門だけで条件抽出が可能なったことによる作業の効率化や負荷分散
2015年現在、エプソン販売や東北エプソンなど20社以上の国内グループ会社の、退職者も含めた4万人あまりのデータは、セイコーエプソン管理のデータセンター内サーバ上で稼働するGeneralistによって管理されている。「Generalist LM」を活用し、毎月新たに設定されるeラーニングの受講、集合研修の申し込みや受け付け状況の確認なども同じ仕組みの中で管理している。
「コンプライアンスや情報セキュリティなど、グループ全体で一定のレベルを維持していく必要のあるテーマについては、eラーニングが非常に有益です。また、品質管理(QC)やプレゼンテーションなどの集合研修では、研修を受ける前にeラーニングで座学部分を事前学習するといった“ブレンディング研修”での活用も増えています」(セイコーエプソンの赤沼氏/同上)
自社のeラーニング用コンテンツは、既存の資料から簡単に変換して作成できる機能とともに、これまで制作に1週間以上かかっていたものが1〜2日程度で制作可能に。また未受講者のリストアップについても、これまで人事部や情報システム部門に打診してをリストアップしていたが、教育の主管部門だけで抽出できるようになったことも作業の効率化や負荷分散につながり、eラーニング受講率の改善にも表れている。未受講者の抽出が簡単に行えるため、教育の主管部門自ら個別にメールを送付するなど受講を促すようアプローチしやすくなったことも大きい。結果として、eラーニングは、「90%を超える」まで受講率が改善したという。
さらに、資格などの人事情報を管理する「Generalist CM」についても、必要な情報を適切、簡単に抽出できることが作業負荷の軽減に貢献している。これまでグループ全体での特定の資格を持つ社員を抽出するのに、申請書や問い合わせなどの人的やりとりも含めて1週間程度を要していたが、共通基盤の操作1つで適切に抽出できるようになった。「強化領域へ人財を最適配置する際、迅速に適切な対象者を見つけられる」ことは、今後の新ビジネスの創出や構築にも大きく寄与するだろう。
国内を中心に整備が進められたGeneralist LMの人材管理システムだが、今後は「Generalist CM」によって管理されるスキルズインベントリも含めて海外展開を行っていく。特にGeneralist LMはコンプライアンスや情報セキュリティ、貿易に関する情報などを学ぶ必要性から、海外の事業部からの要望が強い。システムを仮想化し、クラウド環境へ移行することも検討するようだ。
「セイコーエプソンの生い立ちはもちろん、我々が大切にしているエプソン・バリューを海外現地法人でもしっかり理解してもらうことが重要だと考えています。事業のグローバル展開についてはコンプライアンス教育とバリューの共有を今後も中心に行っていきたい」(赤沼氏/同上)
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