テロ対策に見るここがヘンだよ日本の感覚:萩原栄幸の情報セキュリティ相談室(3/3 ページ)
海外のテロに日本人も巻き込まれる現代、国内では2020年に向けてテロ対策が急務だ。しかし、日本人が講じる対策と諸外国の対策を比べてみると、日本の対策はどこかズレている……。
コインロッカーでの対策
コインロッカーに爆発物を入れて爆発させるのは、比較的簡単だろう。日本には大抵の駅の便利な場所にコインロッカーが設置されている。
だが、諸外国ではコインロッカーがほとんどない。ないこともないが、どこに設置しているか。実は駅の通路より1階下のコインロッカー専用フロアだという。たくさんの人が行き来している場所では被害が大きくなる。専用フロアなら、万一の場合でもコインロッカーだけを利用する人が数人程度であり、被害も極小化されるという発想だ。
日本ではたくさんの人が行き来する通路に堂々と設置されている。それどころか、最近ではゴミ箱と同様に、その利便性を考慮したためか、改札口付近に設置しているケースも多くなっている。
こうして見てみると、諸外国から「日本は平和ボケをしている」と皮肉を言われる理由が分かる。「100人の命を救うために数十万人の命を危険に晒すのか?」と疑問を感じざるを得ないのだろう。もし、新宿駅の全ての改札口のゴミ箱で爆発物が爆破したらどうか。乗客の逃げ場はないし、ホームは人で溢れかえる。線路に下りる人たちがたくさんいるし、電車も止まる。そこにコインロッカーから爆発が起きれば……。もう想像するまでもない。テロという卑劣な行為を絶対に阻止するための方法を考えるには、いつまでも“ガラパゴス”ではいけないと思う。
この講演会には、筆者の友人である会津大学の山崎文明教授にもご登壇いただいた。山崎教授は、NHKで3月19日に放送された「視点・論点」の中で「サイバー攻撃対策」を解説されたが、彼は本稿で触れた日本の状況を憂いている元内閣官房安全保障危機管理室の関係者でもある。ご興味をお持ちの方はNHKオンデマンドなどでぜひご覧になっていただきたい。
萩原栄幸
日本セキュリティ・マネジメント学会常任理事、「先端技術・情報犯罪とセキュリティ研究会」主査。社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会技術顧問、CFE 公認不正検査士。旧通産省の情報処理技術者試験の最難関である「特種」に最年少(当時)で合格。2008年6月まで三菱東京UFJ銀行に勤務、実験室「テクノ巣」の責任者を務める。
組織内部犯罪やネット犯罪、コンプライアンス、情報セキュリティ、クラウド、スマホ、BYODなどをテーマに講演、執筆、コンサルティングと幅広く活躍中。「個人情報はこうして盗まれる」(KK ベストセラーズ)や「デジタル・フォレンジック辞典」(日科技連出版)など著書多数。
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