auショップの販売戦略を支えるモバイルBI 導入の中心となったのは営業部門だった(3/3 ページ)
KDDIのコンシューマ営業と全国のauショップをつなぎ、販売実績をリアルタイムに共有する「Sales Navigator」。1万を超えるユーザーがモバイル環境からアクセスする仕組みは現場の声から生まれた。
レスポンスを重視、あえてデータを非正規化
全国に数千店舗もあるauショップから上がってくる販売データは膨大だ。営業活動のために分析するデータ総量は約8400万レコードにも達するという。これを1万ユーザーで分析するとなるとシステムのレスポンスは悪くなり、利用促進の障壁となる。そこでSales Navigatorでは、NRIの協力を経てユーザー側でロジック操作が不要なシステムを構築することにした。
現場に対してヒアリングをしてみると、実績の抽出ロジックや表示項目を固定しても問題ないことが確認できた。むしろ、現場が求める分析結果はこういう数字だろうというものを話し合い、決め打ちにしていくほうが業務効率の改善につながった。
考えてみれば利用ユーザーはデータ分析の専門家ではなく、営業担当者やauショップのスタッフだ。実績の検索条件を選択してさまざまな軸で抽出できるようにする必要はあるが、そもそも個別に複雑なロジックや演算式を作成するような使い方はしないと判断するのが合理的だ。
そこで、個々の分析帳票ごとに最適化したバッチ処理を行い、データの読み取りや検索に特化した小さなデータベースをたくさん作ることにした。あえてデータは冗長化し、ユーザーが必要に応じてそこにアクセスする。バッチ作業は夜間に行っているが実際にかかる時間は1時間以内だという。
もちろん、このやり方では新たな帳票が求められた場合に、個別のデータ設計を行う必要があるため実装までの期間とコストがかかってしまう。だからといってこのやり方をやめるという判断はしていない。開発納期のスピードアップは可能だと前向きだ。
次のステップはデータのさらなる効率活用
Sales Navigatorの導入によって、営業の仕事は「前日の実績値を販売代理店に報告すること」のような単純なものではなくなった。地域や全国のトレンドと比較しながら、どうしたら担当するauショップの強みを伸ばしていけるのか、あるいは弱点をなくしていけるのかを分析し、支援することになった。他店舗との実績比較がリアルタイムに把握できることで現場のモチベーションアップにもつながっている。
ただし、実際に現場では情報量の多さゆえに「今、見るべき数字がどれなのか」に迷ってしまうという声もあるという。変化が激しい携帯電話の販売市場では、週替わり、あるいは日替わりで最重要指標も変わっていくからだ。また、データの「見方」が分かっているスタッフとそうでないスタッフにも差が生じている。今後は、リコメンデーション機能などデータをもっと効果的に分析できる方法を提供する予定だ。
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