公の場に初登場した日本IBM新社長が語った「ビジネスの勝負どころ」:Weekly Memo(1/2 ページ)
今年1月に日本IBMの社長に就任したポール与那嶺氏が先週、顧客企業向けの自社イベントで講演を行った。公の場に初登場した同氏が語った「ビジネスの勝負どころ」とは――。
顧客企業向けイベントの講演に初登場
日本IBMが5月19、20日の2日間、都内ホテルで顧客企業向けの自社イベント「IBM XCITE Spring 2015」を開催した。初日の基調講演には、今年1月に同社の代表取締役社長執行役員に就任したポール与那嶺氏が登壇。同氏が社長就任以来、公の場で話すのはこれが初めてだ。講演のテーマは「A New Way to Think」だったが、実際の内容は「IBMのビジネスの勝負どころ」といったところか。以下に、筆者が印象に残った発言を取り上げておきたい。
「日本IBMの社長として、私はお客様から任せていただいているIT環境の安定稼働を最優先に考えている」
与那嶺氏は講演で、IBMが最近キーワードとして挙げている「CAMSS(キャムス)」に関する説明に多くの時間を割いた。CAMSSとは、クラウド、アナリティクス(ビッグデータ分析)、モバイル、ソーシャル、セキュリティの5分野の頭文字を取った言葉で、これらの領域を新たな収益の柱に成長させたいという同社の意図が込められている。
だが、同氏はその話に入る大前提として「安定稼働を最優先に」と強調した。顧客企業の基幹システムを数多く扱う同社のトップならではのバランス感覚なのだろう。顧客企業向けイベントの最初のメッセージに相応しい気遣いを感じた。
「会計士でもある私としては、SAPのサービスがIBMのクラウド基盤で利用できるようになったので、日本のお客様にもグローバルな財務会計ソリューションを強力にお薦めしていきたい」
これは、IBMとSAPが昨年(2014年)10月に協業拡大し、SAPが提供する「SAP HANA Enterprise Cloud」をIBMのクラウド基盤でも利用できるようになったことを指す。
公認会計士の資格を持ち、経営コンサルタントとしても活動してきた与那嶺氏は以前から、「日本企業がグローバルに進出していくためには、財務会計の標準化や一元化が必要」と考えていたという。そんな同氏にとって今回の両社の協業拡大は、まさに「自分が注力したいソリューションを手掛けることができる」と入れ込んでいるようだ。同氏の強いこだわりを感じた発言だった。
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