IBMが新ソフトに込めたクラウド市場攻略のシナリオ:Weekly Memo(1/2 ページ)
IBMがシステム環境の構築・運用を自動化するソフトウェアの新製品を投入した。この新ソフトから、同社のクラウド市場攻略に向けたシナリオが浮かび上がってくる。
IBMが「ソフトのパターン化」に注力する理由
日本IBMが6月17日、ソフトウェアの新製品「IBM PureApplication Software V2.1」を提供開始すると発表した。システム環境の構築・運用を自動化する同ソフトによって、企業におけるアプリケーションの短期導入やハイブリッドクラウド利用を支援するのが目的だ。同時に、アプリケーション実行環境でもある同ソフトにおいて、VMwareの仮想化環境を適用したハードウェアをサポートすることも明らかにした。
同社が「PureApplication」と名付けた製品を投入したのは、2012年4月に垂直統合型システムとして発表した「PureApplication System」、2014年6月にそのソフト技術をクラウドサービスとして発表した「PureApplication Service on SoftLayer」に続く第3弾となる。(図1参照)
今回のPureApplication Softwareは、まさしくPureApplication Systemのソフト技術を抜き出した格好で、VMwareなどの既存の仮想化環境や、IBMがクラウド分野で提携関係にあるMicrosoftのクラウドサービス「Microsoft Azure」でも利用できるようにしたものだ。
ミソとなるのは、そのソフト技術の要となる「パターン・デプロイメント」と呼ぶ機能だ。発表会見で説明に立った日本IBMの渡辺公成執行役員IBMシステムズ・ソフトウェア事業部長はこの機能について、「IBMの既存のソフトやパートナー企業のソフトをパターンという新しいパッケージングの概念のもとで再整備したもの。PureApplication Systemの投入以来、全社を挙げてソフトのパターン化に取り組んでおり、現時点では世界で220を超えるパターンを取り揃えている」と語った。
パターン・デプロイメントとは、ソフトの共通項目などをまとめてパターンとして標準化し、そのパターンから「仮想システム」を自動構築して迅速に展開を図ろうというものだ。これによって、アプリケーション環境の構築と管理の簡素化を実現できるとしている。(図2参照)
このパターンには、もう1つ大きな特徴がある。一度作成したパターンは、オンプレミスでもオフプレミスでもシームレスにハイブリッド利用が可能なことだ。IBMではこの特徴を「Create Once Deploy Anywhere」とのキャッチフレーズで、パターンの可搬性を前面に押し出していく構えだ。
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