フィリピン政府のOffice of Civil Defense(市民防衛局)や国営放送PTVと日系企業による地上デジタル放送を使った防災情報システムの実証実験で6月24日、実際の放送波を使ってテレビの電源を入れ、緊急防災情報を表示することに世界で初めて成功した。
防災情報システムは、Office of Civil Defenseのクラウド環境を利用してNECが構築。PTVの放送網を利用して、フィリピン国内の20カ所に設置された30台のテレビへ防災情報を配信する。同システムでは待機状態にあるテレビやワンセグ受信機の電源を緊急警報信号で自動的に入れ、映像や字幕、データ放送を表示させることができる。また日本無線の協力で、PTVの放送網と連動するサイレン・スピーカー局を設置し、音声や警報で地域へ情報伝達できるようにもしている。
NECによれば、電波で受信機の電源を自動的に入れる試みは屋内の実験環境では成功しているものの、屋外を伝搬する放送波を使っての試みは世界で初めて。
フィリピンの地上デジタル放送では日本と同じ「ISDB-T」方式が採用され、政府や放送事業者による放送のデジタル化が進められている。同国では2013年11月の台風「ヨランダ」で、多数の死傷者が出るなど深刻な被害に見舞われた。日系企業が協力する防災情報システムの活用で、台風などによる大規模被害の軽減につなげたい考えだ。
NECではフィリピン火山・地震研究所向けにも広域防災システムを提供している。
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