じかんのほうそくがみだれる!? プロジェクト管理はSFのセカイ?:女子ヘルプデスクのプロマネ修行奮戦記(3/3 ページ)
やっとのことで在宅ヘルプデスク業務開設プロジェクトの「プロジェクト・スコープ記述書」が完成したと思ったら、早くも次なる難関が……。4種類の論理的順序関係って何だ? 先行の作業の開始によって後続の作業が終わる「開始−終了(SF)」関係ってどういうこと?
「終了−開始(FS)」関係は、先行アクティビティが終了しないと後続のアクティビティが開始できない関係。参考書の例には、「壁の漆喰(しっくい)を塗り終わった後でないと壁紙を貼り始められない」とあった。え、イマドキ漆喰って……。
次は「終了−終了(FF)」関係は、先行の作業が終わらないと後続の作業が終了できない関係か。これも参考書の例には「壁の中の電気配線工事が終わらないと、壁を塗る作業が終われない」と書いてあった。この場合、電気配線工事が先行アクティビティになるのよね。この参考書の著者、建築関係の人なのかな?
3つ目の関係が「開始−開始(SS)関係」ね。これは同時に開始するってことよね。参考書の例には「壁紙を貼り始めないと、電気のコンセントや照明のスイッチを取り付ける作業が始められない」って書いてある。どんだけ壁が好きなんだ、この著者。
最後の関係は、「開始−終了(SF)」関係。先行の作業を開始しないと、後続の作業が終了できない……。え? 先行の作業の開始によって後続の作業が終わる? どういうこと? 参考書にも「この関係はまれである」って書いてあって、例が書いてない。
先行って先に始めるんだよね。なのに、後続の作業が終わるって後続の作業がすでに始まっているってことじゃないの? わたしの脳みそが固まってしまった。いわゆる、フリーズ。なんか久しぶりにフリーズした気がする。とりあえず、脳みそを再起動しよう。ぷち。
冷静に考えなくちゃ。先行の作業って、つまり先に始めるってことよね。先に始めているはずなのに、後続のアクティビティがそれよりも先に始まっていて、それが終わらないと先行タスクが始められない? 矛盾してないか?
例えば、会議を行うためには、その会議の開始までに資料の作成が終わってないといけないよね。でも、これってFS関係にならない?
脳がカオス状態になってきた私の前に、ありがたい助け船が。目の前を上司Aさんが横切ったのだ。すかさず“助けてオーラ”を送る。この強烈なオーラによるものか偶然なのかは分からないけれど、上司Aさんがヘルプオーラに引きずられるように歩み寄ってくる。よし。Aさんゲットだ。
Aさん 「どうした?」
わたし 「これ、どう理解したらいいですか?」
Aさんは私の手元を見ると、一瞬ですべてを把握したかのように解説を始めた。
Aさん 「あー、これね。これは私も悩んだことがあるんだ。先行とか後続とかあるから分かりにくいけれど、それをとっちゃって考えてごらん」
わたし 「とっちゃうんですか?」
Aさん 「ああ。終了−開始(FS)関係と開始−開始(SS)関係は、アクティビティの開始条件なんだよ。あるアクティビティが終わったら、それに関連するアクティビティが開始できるのが終了−開始(FS)関係だね。そして、あるアクティビティが開始されたら、関連するアクティビティも開始できるんだ。開始条件だからね」
わたし 「ふむふむ。なるほどぉ。」
Aさん 「そして、いま君が悩んでいる開始−終了(SF)関係も終了−終了(FF)関係はアクティビティの終了条件と考えると分かりやすいんだ」
わたし 「さっきのは開始条件で、今度は終了条件なんですね」
Aさんは、うなずきながら解説を続けた。
Aさん 「分かりやすいのは、終了−終了(FF)関係だね。あるアクティビティが終わったら関連するアクティビティも終わるんだ」
わたし 「はい、それは分かります」
Aさん 「開始−終了(SF)関係は、あるアクティビティが開始されると関連するアクティビティが終了するってことだね。ヘルプデスク業務で言うと、そうだねぇ、先行アクティビティとして、誰かが通常業務を始めようとした、としようか。始めようとしたけれど、トラブルがあって始められない。そこで、後続アクティビティであるトラブルコールを先に始めるんだ。で、アドバイスで障害が取り除かれ、無事に通常業務が開始されたら、ヘルプデスク業務を終わらせることができるじゃないか。そういう関係だね」
わたし 「おぉぉ。なるほど。私が日々やっていることだ」
やっぱり、苦手なんて思っちゃいけない。SF関係だって、まれだけれど確実に存在するから、PMBOKで紹介されているのだろう。PMBOKはすべて、先人たちの失敗も含めたいろいろな経験が財産になっている、と考えるのがいいかも。
それにしてもSF関係、壁の例で言うと一体、どうなるのかな?
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