日本オラクルは6月30日、2016事業年度の事業戦略について説明し、クラウド市場でのシェア拡大を図る「The Power Of Cloud by Oracle」(POCO)戦略を発表した。経営体制の刷新や営業体制の拡大などを通じて、2020年に国内シェアトップを狙う。
POCO戦略で同社は(1)SaaS・PaaS・IaaSの事業拡大、(2)システム事業の拡大、(3)営業強化、(4)地域拠点の拡充――の4つを重点項目に掲げる。
(1)では主要クラウドサービスの「Oracle Marketing Cloud」「Oracle HCM Cloud」「Oracle ERP Cloud」「Oracle EPM Cloud」「Oracle Service Cloud」「Oracle Sales Cloud」で専任部署を発足させるほか、直販営業体制も拡充、国内データセンターの開設も予定する。(2)では「エンジニアドシステム」と呼ばれる統合型システム製品の販売拡大やストレージソリューションの強化も図る。(3)では事業のグローバル展開を図りたいとする顧客企業の支援体制を拡充し、(4)では中部および西日本支社の管轄を細分化して、地域密着型の営業体制に再編するとした。
2015事業年度の業績は、売上高が前期比3.9%増の1610億円、営業利益が6.7%増の470億円、純利益が同11.3%増の302億円だった。2014年4月に代表執行役社長兼CEOに就任した杉原博茂氏は、「就任直後に『オラクルはハードウェアビジネスにシフトするのか』『データベースやソフトウェアは大丈夫か』という心配の声(杉原氏は前職でハードウェア事業を担当していたため)をいただいたが、まずは当社の基幹事業を着実に伸ばすことに注力し、成果を出すことができた」と振り返る。
2016事業年度は日本オラクルの創業30周年にあたり、杉原氏は「第2の創業期」と位置付ける。その戦略として打ち出したのが、上述のPOCO戦略だという。
同氏は、「ラリー(エリソン会長兼CTO)から『日本では全く新しいことをやってくれ』と言われている。就任時に国内クラウド市場でナンバーワンを目指すと表明したが、今期はその2年目」とし、「ミッションクリティカルから企業システムまでの信頼と安全を長年支えてきたオラクルならではサービスを展開したい」と述べた。
新戦略を推進するにあたって経営陣も、クラウド分野の技術、アプリケーション、システム・基盤それぞれの事業統括を中心に、営業、アライアンスからなる体制に再編。また、クラウド分野で新たに200人を採用するとしている。
また杉原氏は、クラウドを重点事業としつつも、クラウドを支える基盤向け製品も不可欠だと語り、最新プロセッサのSPARC M7も紹介。高速処理やデータ圧縮、セキュリティなどのソフトウェア技術をいかんなく詰め込んだハードウェア技術が同社の根幹にあるとも述べた。
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