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トヨタ役員の麻薬密輸事件から考える本当の事件対応とは?:萩原栄幸の情報セキュリティ相談室(1/4 ページ)
トヨタ初の女性役員が逮捕された事件はショッキングだが、それ以上に驚いたのは同社の対応だ。実は昨今の情報セキュリティ犯罪にも通じる、企業として本当に実践すべき有事対応のポイントがみえてくる。
麻薬取締法違反容疑で逮捕されたトヨタ自動車の常務役員だったジュリー・ハンプ氏が辞任した。事件の全容はまだ明らかになっていないが、今回はこの事件について情報セキュリティの視点から考えてみたい。
様々な報道や海外の筆者の友人からの情報をもとに現時点での状況をまとめてみると、事件の経緯は次の通りである。
- 4月1日:ハンプ氏がトヨタ自動車の女性初役員に就任
- 6月8日:ケンタッキー州の国際空港からハンプ氏あての小包が日本に向けて発送。ケンタッキー州には国際空港が2つあり、どちらかは不明。発送元はミシガン州
- 6月11日:成田空港に小包が届く
- 6月18日:警視庁がハンプ氏を逮捕、容疑は麻薬取締法違反
- 6月19日:豊田章男社長が会見
- 6月23日:警視庁がトヨタ本社などを家宅捜索
- 6月30日:ハンプ氏が弁護士を通じて辞任届を提出、トヨタは同日付で受理
- 7月1日:トヨタがハンプ氏の辞任を発表
この事件でまず筆者が驚いたことは、世界を代表する自動車メーカーのトヨタ(2014年グループ売上は25兆円超)であるにも関わらず、女性役員が今まで1人もいなかったことだ。国によってはこれが明らかに法律違反になる状況である。また、パンプ氏の逮捕翌日に豊田章男社長が会見で「かけがえのない仲間。仲間を信じて捜査に全面的に協力する。法を犯す意図がなかったことが明らかになると信じている」と述べたが、突っ込みどころ満載な発言だと感じた。
パンプ氏は当初、小包の中身を「知らなかった」というが、大手新聞には図解入りで小包の中が掲載された。それによれば、おもちゃのネックレスの下に紙袋がありその中に問題の薬が5錠、ペンダントケースの底に13錠、ビニールが敷かれた箱の底に39錠があった。発送した人物は、これだけの量の薬を違法だと知りながら空輸していたのは間違いないと思われるし、ハンプ氏もそれを求めていたはずである。誰かがハンプ氏を失脚させるために仕組んだとは考えにくいし、ハンプ氏は警察や会社にそう弁解した様子もなかった。
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