SAP HANAは次世代の「プラットフォーム」として広がるか:Weekly Memo(1/2 ページ)
SAPが「SAP HANA」の最新版を投入した。同社はHANAを企業システムにおける次世代の「プラットフォーム」と位置付けるが、果たしてどこまで広がるか。
HANA最新版はIoTやビッグデータ活用に対応
SAPジャパンが7月1日と2日の2日間、都内ホテルで顧客企業の経営幹部を対象にプライベートイベント「SAP SELECT」を開催したのを機に、SAP HANAのビジネス状況と最新版の国内市場への投入について記者会見を開いた。
HANAは独SAPが2010年にインメモリ型のデータベースとして世に送り出し、今では企業システムにおけるOLTP(オンライントランザクション処理)などの基幹系とOLAP(オンライン分析処理)などの情報系の業務アプリケーションを単一基盤でリアルタイムに実行できる次世代の「プラットフォーム」と位置付けている。
SAPのこの動きは、これまでERPをはじめとした業務アプリケーション市場をリードしてきた同社が、データベースを中核としたプラットフォーム市場に進出した格好だ。これは取りも直さず、長年にわたって同市場をリードしてきた米Oracleと真っ向からぶつかる構図となる。果たしてSAPはOracleを追撃できるのか。筆者はこの視点を持って取材に臨んだ。
まずは会見で説明のあったHANAの最新状況を紹介しておくと、最新版となる「サービスパック10(SP10)」では、可用性や耐障害性などの信頼性を一層向上させるとともに、IoT(Internet of Things)やビッグデータ活用を企業システムに取り込みやすくしたのが、大きな機能強化点となっている。それらの詳細については発表資料などを参照いただくとして、記者会見では独SAPからHANAや予測分析ツールの開発責任者も駆けつけて熱心に説明。プラットフォーム拡充への力の入れようをうかがわせた。
会見で示された図を2つピックアップしておくと、まず図1がHANAのこれまでの進化の変遷である。SAPジャパン バイスプレジデント プラットフォーム事業本部長の鈴木正敏氏によると、「HANAは次世代のプラットフォームに向け、SP5でOLTPとOLAPを統合し、SP9にかけてエンタープライズレベルの信頼性を一層向上させ、今回のSP10でIoTやビッグデータ活用にも対応させた。商品化して5年が経ち、今回のSP10でエンタープライズシステムのプラットフォームとしての機能やサービスは基本的に具備できたと考えている」という。
関連記事
- 松岡功「Weekly Memo」バックナンバー一覧(2008年開始)
- インメモリ技術のマルチテナント運用に向けた布石、SAPがHANA新版
SAP HANAの最新版では共通システム基盤でのマルチテナント対応や数百テラバイト級のデータをインメモリ展開した際の対応など、複数アプリケーションで同技術を本格運用した場合を見越した機能拡張が図られた。 - SAPとIBMの協業拡大で見えてきたIT業界の対立構図
SAPとIBMが先週、クラウド事業での協業を拡大すると発表した。この動きはIT市場にどんなインパクトを与え、IT業界の勢力図にどのような変化をもたらすのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.