プロマネは“コストのギャップを埋める”錬金術師?:女子ヘルプデスクのプロマネ修行奮戦記(2/3 ページ)
次なる難関はお金の話、“コスト・マネジメント”。ついつい「予算の範囲内でまかなうために、どこにいくら使えるか」って考えてしまいがちだけど、それではダメみたい。だとすると、どう考えればいいのか……。
なんと、いきなりのダメ出し……。今日のAさん、なんだか厳しいぞ。
わたし ?? えーと、今回のプロジェクトの予算は金額が決まっているから、今さら予算取りとか考えなくていいんですよね?
Aさん そうだね。予算の金額は決まっている。会社としてはその予算でやってもらわないと困るし、予算オーバーなんて許されない。
わたし だから、与えられた予算に合わせて……
Aさん そこが違うんだな。そう考えちゃダメなんだ。
私がすべてを言い終わらないうちに、再びダメ出しが……。配分じゃなきゃ、いったいどこに予算見積りのツールを使うっていうのよ。
わたし とすると、どう考えればいいんですか?
Aさん 会社から予算が与えられていると、どうしても「予算の範囲内で抑えるために、どこにいくら使えるのか」って考えてしまいがちなんだ。でも、そう考えると、「限られたお金を正しく使う」ことが難しくなるんだな。大事なのは、「このプロジェクトは本来、いくらかかるのか?」を正しく算出することなんだ。
わたし 本来かかる金額を算出するんですか?
Aさん そう。PMBOKの中にコストを見積りするためのツールがいろいろ紹介されているだろ?
まだ、コスト・マネジメントの全てに目を通したわけじゃないけれど、なにか書いてあったような気がするし、ツールも当然載っているだろう。上司Aさんの話に小さくうなずくと、Aさんが続けた。
Aさん ツールを使って「本来かかるはずの金額」を算出し、会社から与えられた予算と金額との間にどれだけのギャップがあるか確認するんだ。
わたし 金額のかい離がどのくらいあるのかを確認するんですね?
Aさん そう、プラスかマイナスかは分からないけれど、コスト・マネジメントの計画から本来かかるであろう金額をちゃんと算出し、実際の予算金額との間に生まれるギャップがどの程度かを正しく把握するんだ。
わたし ほとんどの場合、余るってことはなくて足りないと思うのですが……。
Aさん そうだねぇ。あり余る予算って話はほとんどないね。
わたし 本来かかる金額と、予算との間のギャップを知ってどうするんです? やっぱり足りないですって確認した後が問題だと思うのですが……。
Aさん そうだね。まずはギャップが分かるよね。例えば、今回は予算額のほうが低かったとする。つまり、足りない場合だね。この足りない分をどこから“ねん出”するかを考えるんだ。
わたし ねん出って言っても、新たに会社が出してくれるわけじゃないですよね。
Aさん プロジェクト・マネジャーが上層部と交渉してコストを引き出す、ということもあるけど、それはまれなケースだね。そこで、プロジェクトのどこかを圧縮できないかとか、お金がかからないように工夫できないかとか、あるいは、余計な予算を組んでいる部分はないかとか、目を皿のようにして探すんだよ。そして、そこでどの程度の金額が浮くのかチェックし、浮いた金額をどこに回すのかってことを考える。これがコスト・マネジメントのコツなんだ。
わたし つまり、もともとある予算額をケーキカットのように、どこにいくらの金額と配分するんじゃなくて、本来かかる金額を与えられた金額内で収まるよう、あれこれ考えるってことですか? 金額的に抑えられるところを正しく抑えて、削れないところに正しく回せるようにする、みたいな。
Aさん その通り。本来、金額としていくらかかるプロジェクトなのか、ギャップがどの程度なのかを知らないと始まらないから、いろいろあるツールのどれかを使って見積るところから始めるんだよ。
わたし なるほど。でも、工夫するといっても……
Aさん 例えば、システム開発だったら、開発サイドで行う作業の中から顧客にできる部分をやってもらうことで人件費を抑えたり、作成するドキュメントの数を減らしたりするなどの工夫ができるねぇ。あとは、パートナー会社を利用するとかね。
わたし おぉー。そういう工夫かぁ。なるほどぉー。
Aさんのアドバイスは、ちょっと目からうろこなお話だった。例えばこの話、旅行をイメージすると分かりやすい。旅行の積み立てをしていて10万円貯まったとする。何も考えずに、その10万円で適当に旅行するのか、旅先でやりたいと思っていることにいくらかかるのかを算出して、予算内で収まるように交通機関や宿泊先を調整するか、の違いと一緒よね。
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