リコーのIT戦略を“攻め”に変えたBIと情報活用の力: 「君らはいらない」と言われたあの日から(1/3 ページ)
リコーがITによる経営・業務革新のための新組織「経営革新本部」を発足し、部門を横断したBIと情報活用の強化を急速に進めている。この背景に、このままでは必要とされなくなるというIT部門の強い危機感があった。
オフィス向け複写機/複合機やプリンタ、デジタル印刷機などを主事業ドメインに、世界約200の国や地域で現地密着型の営業活動を展開するリコー。個人向け商材ではスティック型の360度動画撮影カメラ「THETA」やPENTAXブランドのデジタルカメラもよく知られ、2015年3月期の連結売上高は2兆2319億円。イメージ処理分野の雄だ。
そんな同社が2014年4月、生産、販売、会計などの基幹システムの開発や運用を担ってきた「IT/S本部」を廃し、経営企画部門の一部やBPR(Business Process Re-engineering:成長のため、既存の業務内容や業務フロー、組織構造、ビジネスルールを全面的に見直し、再設計する活動)を担ってきた部隊と統合した新組織「経営革新本部」を発足させた。
同社がこの決断を下したのはなぜなのか。ユーザー事例を中心としたイベント「アシストフォーラム2015」に登壇したリコー 経営革新本部 設計・情報活用グループでグループリーダーを務める國元正彦氏がその狙いを説明した。
経緯:ITで「次の成長軌道」を描くために、変わる
2011年、旧IT/S部門は当時の近藤史郎社長にこう言われた。「このままでは君たちはいらない。IT部門は現場の痛みを知らない」──。
このメッセージがIT/S本部に与えた衝撃は大きかった。以来、部門内で連日議論を重ね、そして次の結論にたどりつく。國本氏は「バックヤードでシステムのお守りをするだけでは、企業経営に貢献しているとは言い難い。改めてそれに気付かされました。同時に、現場と一体となって業務改革のために汗を流すには、組織体制の見直しが不可避でした」と当時を振り返る。
旧組織は、基幹システムごとに企画や開発、運用の人員を割り当てる業務別組織体制を採用していた。こうした個別最適化された体制はよいところも多かったが、業務改革に向けて部門を横断するようなプロジェクトや新システムへの整備で機敏に対応できなかった。これではいけない。経営企画部門やBPRを担ってきた部門と統合し、再始動することを決めた。狙いは「戦略企画」「グローバルガバナンス」「開発」「保守運用」の機能別組織へ脱却し、業務改革に向けた足場固めを行うことである。
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