リコーのIT戦略を“攻め”に変えたBIと情報活用の力: 「君らはいらない」と言われたあの日から(3/3 ページ)
リコーがITによる経営・業務革新のための新組織「経営革新本部」を発足し、部門を横断したBIと情報活用の強化を急速に進めている。この背景に、このままでは必要とされなくなるというIT部門の強い危機感があった。
成果とその後:開発生産性の高さを生かし、2カ月で20本のアプリを構築
QlikViewによって新たに整備したシステムの1つが、経営ダッシュボード「RMD(Ricoh Management Dashboard)」だ。
リコーは、システムやデータ定義などの違いによって経営レベルでのグローバルでの情報共有に遅れが生じ、タイムリーな意思決定がしにくかったことを大きな課題としていた。RMDはこの課題に真っ向から切り込んだものだ。実現の道のりは平たんではなかった。横田氏は「経営層は会社全体、社会全体をふかんして経営判断します。ですから、得たい情報は日々変わります。これらの要因から、システム整備にあたる要件を詰め切ることが困難でした」と苦労を打ち明ける。
そこで、経営層に必要だとされる情報を抽出できる仕組みをプロトタイプとして構築し、それへのフィードバックをもとに改修を続けていく方針に開発手法を改めた。じわじわと成果が出てきた。
「そこで構築したアプリケーションは2カ月で約20本に上ります。これもひとえにQlikViewの開発効率の高さのたまものです。現在は“予想値が必要”“指標が適切でない”との声をシステムへ反映させることで、経営における情報活用をより高めるための支援に注力しているところです」(横田氏)
このほか、2014年4月にはじめた「データコンシェルジュ」も、今や同社にとって情報活用の推進に不可欠なものになった。データ活用に向けてユーザーが直面する課題は「データの有無」「どこにあるかが分からない」「分析から有効な施策を立案する手法が分からない」「分析作業の負荷が大きい」など、多種多様だ。データコンシェルジュは、データサイエンティストやデータオーナー部門と連携を図ることで、分析の支援からデータの収集、ソリューションの提案まで総合的に支援してくれる。
データコンシェルジュへ寄せられた相談件数は、2015年6月までの累計で188件。(図5)これらのすべてに対し、専任コンシェルジュ4名と兼任6名の体制で対応し、成果を上げている。今後、データコンシェルジュの支援を通じた「データモデル設計を、より短期で」を目指し、“スピード”を徹底して意識した情報活用のさらなる推進に取り組んでいく考えだ。
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