竹中工務店の業務iPadが「現場に向いている」理由(1/2 ページ)
竹中工務店が建築現場の生産性向上のため、社員にiPadを配布。同時に“社外秘”のノウハウや技術書類をどこでも閲覧できる環境をインフォテリアの「Handbook」で整えた。
2020年のオリンピック・パラリンピック東京開催を控え、特需があるのはどの業界か。その恩恵を受ける業界の1つに建築業界が挙がる。オリンピック関連施設のほか、昨今の都心部大型開発や高層ビル建設ラッシュの様子を見ると、建設需要が増えており、活況を呈しているように見える。
一方で業界には、需要に対する人手不足、さらには資材費の高騰によるコスト高といった課題も叫ばれる。日本一(2015年8月現在)の高さの超高層ビル「あべのハルカス」を建設したことでも知られる国内スーパーゼネコン(最近3カ年の売上高平均が1兆円を超えるゼネコン)の竹中工務店が、これらも想定した業務の課題をどう解決しようとしているのか。同社はこのほど、建築現場の生産性向上を目的に、約5000台のiPadを社員に配布した。
経緯と課題:iPadで「機密情報のガイドラインを確認」したい
建築の専門家として高い技術力を保つことに腐心し、数々の建築物を世に送り出してきた竹中工務店。今後さらに増える需要、さらなる顧客ニーズへの対応を強化し、生産性も高めることを目的に先進のIT技術も積極的に採用している。
その一環で進めたのが、スマートデバイスを活用して業務効率化を図る「竹中スマートワーク」プロジェクトである。営業、設計、生産の各部門社員にひとり1台、約5000台のiPadを配布し、いつでもどこでもメール送受信などの基本業務が行える環境を整えた。
そして、「さらに/もっと/こうなれば」とする現場業務部門社員からのニーズも高まる。
同社は設計や施工時に順守すべき項目やガイドラインを「設計・施工基準書」「鉄筋工事ハンドブック」といった技術書類にまとめ、全国の建築現場に配備している。工事の進ちょくや状況を管理する工事担当者はこれらの書類を都度参照しながら、適法かつ安全な作業を徹底するためのものだ。しかし、ガイドラインは厚さ10センチのファイル数冊が連なる膨大な量。屋外へ持ち出すのが困難なため、これまでは工事中に確認すべき項目が出たならば一度事務所へ戻って確認しなければならなかった。
確認すべき点が解消されるまでは現場の作業も止まる。工期に影響を及ぼしかねないが、安全徹底のため仕方ない。
「こうした状況は、工期を適切に管理するという点で早期解決しなければなりませんでした」(竹中工務店 東京本店 作業所主任 工事担当の森政史氏/役職・肩書きなどは執筆当時のもの 出典:インフォテリアのWebサイト、以下同)
膨大な量の冊子を電子化すれば、かさばる/重いといった物理的な課題は解消できる。しかし、これら技術書類は同社のノウハウの集大成で、超機密情報。タブレットで確認できるようにする(データ化し、外部へ持ち出せるようにする)ならば、この機密情報をどう安全に扱うかの課題も同時に解決しなければならない。
「外部に漏えいすることは絶対に避けなければいけません。そのため“元データを扱えるのは管理者のみ”“データを勝手に持ち出せない”“アクセスできる端末を制限する”などの確実にセキュアな運用を実現できる仕組みも必須でした」(竹中工務店 グループICT推進室ICT企画グループ国内IT戦略部長の木原康之氏/同上)
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