IoTの中にUTM キヤノンITSが組み込み型セキュリティに本腰
キヤノンITソリューションズがスウェーデンのClavisterと協業。IoT機器にUTMを組み込む新たなセキュリティモデルの実現を目指すという。
キヤノンITソリューションズ(CITS)は10月6日、UTM(統合脅威管理)の開発を手掛けるスウェーデン企業Clavisterとの協業を発表した。ファームウェアのサイズが11Mバイトという特徴を生かし、IoT機器などにUTMのセキュリティ機能を統合する新たな取り組みを始める。
Clavisterは1997年に設立され、UTMソフトウェアを独自開発する企業。同社ブランドのUTMアプライアンスを中小企業から通信事業者まで提供するほか、軽量なファームウェアを活用したセキュリティソリューションの開発も行い、国家のサイバー防衛システムの開発やドイツにおけるスマートシティプロジェクトでのセキュリティシステムの開発なども手掛ける。
CITSは、これまで11万台以上のUTMアプライアンスを国内で販売しており、今回の協業ではIoT向けセキュリティソリューションの新規開発に加え、Clavisterのアプライアンスや仮想化環境向けUTMソフトウェア(バーチャルアプライアンス)の販売も行う計画。「約20年にわたるネットワークセキュリティ分野の経験を生かして、Clavisterと新たなセキュリティモデルを実現していきたい」(セキュリティソリューション営業部長の崎山秀文氏)という。
Clavisterのジム・カールソンCEOは同社の強みに、(1)安全性、(2)高可用性、(3)信頼性――を挙げる。UTMファームウェア「cOS Core」の開発ではオープンソースソフトウェアを採用せず、自社開発に徹していることから、「ここ数年に多数のネットワーク機器が影響を受けた深刻な脆弱性の問題とは無縁」(同氏)という。高可用性では既に多数の通信事業者のバックボーンで同社のソフトウェア技術が採用されていることや、米Intelの技術パートナーであることなどを挙げる。
3つ目の信頼性についてカールソン氏は、「我々はバックドアとも無縁だ」と強調する。その理由は、国家の諜報活動に一切関与していないというもの。「少し前にメーカーが国家のスパイ活動に協力しているのではないかと疑念を持たれる出来事もあったが、当社はもとより、スウェーデンとしてそうした活動に関与することは一切ない」と話す。
両社の協業の第一段では中小企業向けUTMアプライアンスの販売を11月上旬に開始し、まずは2020年に25億円の売上目標を掲げる。UTMの導入実績ではレンタルオフィス大手のリージャスが世界1800カ所の拠点にアプライアンスを採用して年間約2億6000万円のコスト削減を達成している。IoT分野でシステムへの組み込みでは、ビデオ会議システムに組み込まれたUTM機能で盗聴などの攻撃への防御とQoSの両立を図っているという。
崎山氏は、「当社はSIer、メーカー、販売会社の機能を合わせ持つので、この特徴と約20年にわたるネットワークセキュリティ分野の経験を生かして、Clavisterと新たなセキュリティモデルを実現し、日本とアジアに広げていきたい」と語る。
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