通勤ラッシュで事件発生、リスク管理の重さを思い知る朝……:女子ヘルプデスクのプロマネ修行奮戦記(1/3 ページ)
なんだか頭にすっと入ってこないなぁ〜、プロジェクト・リスク・マネジメントの項……朝の通勤ラッシュの中、そんなことを考えていたら大事件発生!! リスク管理の大切さを思い知るハメに……。
これまでのあらすじは
会社でヘルプデスクを担当する私が、ある日突然、在宅ヘルプデスク部門開設プロジェクトのマネジャーに任命されてしまったから、さぁ大変。鬱憤晴らしで飲みに出かけたら、今度は勢いでPMBOK(ピンボック)とやらを勉強するハメに……。しかもしかも! いつの間にかPMP(Project Management Professional)の資格試験を受けることになっている……。私は在宅ヘルプデスク業務のプロジェクトを成功に導けるのか? PMPの試験に合格できるのか? いや、そもそも、受験できるのか?
今は、会社へ向かう電車の中。PMP試験のための勉強を“すきま時間”を使って進めている。家で勉強しようと思っても、何かと横からのチャチャが入って集中できない。叔母さんとか猫とか……それ以外の誘惑とか……。
座れた時は参考本や問題集を広げられるのだけれど、通勤ラッシュの時間は座れない日のほうが多い。そういう時は、知識エリアマッピングを書き写したメモや、苦手だなぁと感じた部分を書き写した小さなカードを眺めるようにしている。私は学生の頃からよく「単語帳」のお世話になっているのだ。
PMPを取得するために学習を進めていると、PMBOKの知識エリアを一覧表にした図を見直すことが多い。全体像を把握しないと、今、自分がどこにいるかが分からなくなって、迷子になってしまうのだ。実際のプロジェクトも、まだまだ計画段階。そのため、立ち上げプロセス群と計画プロセス群を中心に知識を広げ、何とか業務時間の中でプロジェクトにかかわる部分を作ってきた、というわけ。
そもそもPMBOKはルールではないから、書いてあることを全て導入する必要はないのよね。自分たちにとって必要なこと“だけ”「やりましょう」「導入しましょう」というスタンスでいいはず。だから、PMBOKに載っていることをまじめに全部やらなければならない、ということはない。
けれど、世界中から集めた成功事例を一般化したものだから、踏襲すればプロジェクトの成功確率は高くなる。しかも、私はちゃんとしたプロジェクトマネジャーをするのが初めてだから、何が必要で何が必要でないのかさえ判断がつかない。上司Aさんは、時々「これは作ってね」「これは必要ないと思うよ」などとアドバイスをくれるけれど、何を基準に判断しているのか、今は聞く余裕もない。「作らなくて良い」と聞くと、ただホッとしてしまうだけで、なぜ作らなくて良いか、あまり考えてこなかったのだ。
あ、もしかしてデキる女は、「いえ、ぜひ作らせてください。勉強のために」と言う必要があるのかな? いや、下手に「作らせてください」と言ってもやぶ蛇だし、本当は必要なものを「作らなくて良い」とAさんが言う、とも思えない。ここは1つ、Aさんに素直に従っておくことにしよう。いや、せめて、なぜ必要なのか? とか、なぜいらないのか? とかは理解しておく必要があるだろうな。デキる女としては。
さて、今日は結局、座れなかった。そこそこ満員の電車の中では、立った状態で参考書を広げるわけにもいかない。そこで私の目の前には、さっきも言った知識エリアマッピングの図が広がっているというわけ。知識エリアは全部で10個。残すは2つ。前回飛ばしたプロジェクト・リスク・マネジメントとプロジェクト調達マネジメントだ。ああ、ここまで長かった。あと2つの計画を立てたらやっと、おわ……る……?……。あれ?
わたし スタートラインに立っただけか……
当たり前といえば当たり前なのだが、ものすごい現実を突き付けられた。計画が大変だと口にしながらここまで来たけれど、計画より実施、そして監視・コントロールの方がもっと大変に決まっている。しかも場合によってはもういちど計画を立て直す必要だってあるだろう。朝から、何かずっしりしたものを背負った気分だ。今ごろプレッシャー? いやいや、何をいまさら。ひとまず学習を進めよう。
知識エリアを見ると、プロジェクト・リスク・マネジメントの計画プロセス群には5つのプロセスがあるのだが、何となく聞いたことがあるような言葉が並んでいる。例えば、定性的リスク分析とか、定量的リスク分析とか。
わたし これって、ITILで勉強したとき出てきたやつと一緒かな? 一緒だったら楽なんだけどなぁ。
仕事がら、ITIL Foundationの資格を以前取得したんだけど、PMPよりは楽だったような気がする。あっちは40問だったしね。もっとも、覚えているかどうかはアヤシイけれど。覚えてなかったら、「一緒だったら楽」だなんて言えないじゃないか。何はともあれ、まずは、いつも通り、どのようなプロセスなのかを確認する。
プロジェクト・リスク・マネジメントは、「プロジェクトに関するリスクのマネジメントの計画、特定、分析、対応、コントロールなどの実施に関するプロセスからなる」と、参考書には書いてあった。なるほど、まずはどのようにリスクに対応するかを計画するんだろう。その次に、どのようなリスクがあるのか特定したり分析したりするわけね。
と、乗っていた電車が駅でもないところで止まった。何かあったかな? ちょっと待ってみたけど、車掌さんは何も言わない。「信号待ちです」とか、「前の電車がつかえてます」とか、普段なら何か言うのに。よく考えると、「電車が遅れる」というのは、電車通勤者にとって最大のリスクかもしれない。逃げ場もないもんね。もし、時間がかかるようなら会社へ電話を入れないといけないなぁと思い、カバンからスマートフォンを引っ張り出した。
わたし ん???????? な、ない?!
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